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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈国王篇〉後編-10

「ルーツがどうであれ、あの子の心は本物です。皇子を心の底から想っていました。」

脳裏にいくつもの景色が浮かぶ、そのどれにもリュナは存在していた。誘惑の煙にまやかしを見せられているように頭がくらくらする。

「それを肌で、心で感じているのは皇子ご自身です。迷わないで、余計な考えは捨てて下さい。」

手に絡み付くような感覚。この腕の中に、軽やかに彼女はいた。

「しかし、あいつの正体が分からない。魔物ならば奴らの差し金か…。」

「敵でも何でもいいじゃないですか!」

言葉を被せて千羅は訴えた。カルサは誘導されるようにゆっくりと千羅の方へ振り向く。

「騙されたのなら騙し返して手に入れたらいい。でも私はあの子が嘘をついたとは思えません。だから追い求めてもいいんですよ。」

千羅の熱の入り具合にカルサは顔をしかめた。

「最近の皇子は手放す事しかしていません。何か希望を手にされてもいいのではありませんか?」

切なげな表情で千羅は訴えた。確かに、譲り渡すことや諦めることしか考えていない日々が続いていた。手の内で色んな物が崩れ落ちていく、箱を開けては崩れ、ベールを捲っては闇に飲まれていくような感覚に疲れていた。

そう、疲れていた。

「リュナが希望の光か。」

開いては閉じる真実の扉にカルサは翻弄されつつあった。自分の記憶が本当に自分の物か、それとも作られたものかも分からなくなりそうだ。

リュナを信じたい、しかし自信がない。

「リュナは貴方を、この国を守る為に敵陣へ向かった。信じてみる価値はある筈です。」

まずは自分という舵を取れ。目指す灯台がまやかしでも光があるなら進む事が出来る筈だと教えられている。

風は向かい風か追い風か、どちらにしても船は進むから。

「でも千羅、オレはもうこれ以上何も失うつもりはない。この国に出来る全てを尽くしていく。未来へ繋がるように。」

カルサの声が変わった。

今までとは違い少し清々しい表情にも見える。カルサは微笑み、千羅に答えた。

「オレの行く道はどうしても変わらないなら、光を目指して進む事にする。ありがとう、千羅。」

千羅は微笑み返すことで答えた。それを合図にカルサは再び歩き始める。

後ろで漏れた安堵の溜め息にカルサは気付いていない。千羅の切ない思いはなんら変わっていなかった。

崩れ落ちそうな体を気力だけで持ち直して歩き出す。今でこそ落ち着いたものの、まだ余韻で震えていた。

『どうしたの?』

ふと頭の中に瑛琳の声が響いた。幻聴だろうか。それでも自分の異変に気付いて心配してくれているように感じた。

しっかりしろと自分を強く諭す。今カルサから目を離す訳にはいかない、それはこれからも続いていくだろう。カルサを守らなければいけない。新たな決意と共に生まれた可能性がある。

ウ゛ィアルアイの目的の1つはまさか。


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