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【推理 推理小説】

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4th_Story〜手紙と2筋の涙〜-3

1.境界

 中学2年生になったばかりの里紅は、黄依と一緒に菖蒲中学校からの帰路を辿っていた。
 初めて制服というものに手を通してから、早1年が経過した。中学1年生の頃は、今までとの環境の違いに適応することで精一杯だったが、2年生にもなり、周りの環境にも慣れてきた。これから3年生になれば、高校受験が待っている。ゆったりと過ごす事が出来るのは2年生の内だけなのだ。
 川沿いの舗装された道を、他愛も無い会話をしながら歩いていた2人だったが、いきなり黄依が立ち止まった。
「どうした?」
「川に何か浮いてない?」
 黄依の言う川の方へと目を向けた里紅は、確かに、何かを見つけた。だが遠すぎてそれが何なのか分からない。
「行ってみよう」
 そう言って、里紅は駆け出していった。黄依もそれについて行く。
 川に浮いている何かは、人間であった。詳しく言うならば、滑って転んで川に落ちて溺れてしまった、女の子だった。里紅が川に飛び込み、何とか引っ張り上げて、救助したのだ。その女の子が、荒い呼吸を繰り返し、こう叫んだ。
「し、死ぬかと思ったああああああ!」

 よくよく話を聞いてみると、どうやら川辺に咲いている花を見ようとして滑ったらしい。確かに、名前は分からないが、色とりどりの綺麗な花が咲いていた。
「大丈夫と思ったら、滑っちゃって。えへへ」
 えへへ、ではない。一歩間違えば死んでいたのだ。そのあたりを里紅が説明しても、聞く耳持たず。へらへらと笑っているばかりである。コイツ、俺をバカにしているなと思ったが、相手は子供、おそらく小学生だ。あまり本気になってはいけないと、里紅は自分に言い聞かせる。
「生きてたんだし、良かったよ」
 黄依はそう言うが、里紅には納得できないものがある。
「そうそう。結果オーライ」
 当の女の子はお気楽モード。里紅が上着を貸したときにお礼を言っていたことから、常識が無い訳では無いらしいが、どうにも緩い感じの子だった。このまま放って置く訳にもいかないので、里紅と黄依で家まで送る事にした。家はこの近くらしい。
「じゃ、お兄さん達が連れて行ってあげるから。行くぞ、お譲ちゃん」
 そう言うと、その子は明らかに不機嫌な顔で、里紅にこう言った。
「私の名前は、海晴蒼! それに、13歳の中学生だ!」
 同い年だった。黄依も目を見開いて驚いている。しかし、蒼の見た目は非常にロリで、言わなければ小学生で通じるほどの見た目なのだ。しかも低学年。キャラとしては使い古された感じの。
「使い古されたとか言うな!」
 先ほど感じた緩いという印象は、見せ掛けだった様だ。怒ると良く喋る。
「いや、しょうがないよ、しょうがない……」
「しょうがなくない!」
 しょうがなくないらしい。里紅と蒼の会話がよほど面白かったのか、珍しく、黄依は腹を抱えて笑っていた。「腹筋が、腹筋が」と息も絶え絶えに。まあ、黄依が笑ってくれるならそれで良いのだけど。蒼は良くないらしく、頬を膨らませていたが、その表情に余計子供っぽさを感じる里紅なのであった。結局、それから蒼を家に送っていった。1人暮らしをしているという蒼に、里紅は「子供が1人で大丈夫か?」とからかっては、蒼から必殺ロリパンチを喰らっていた。攻撃力は53万です。
 そんなこんなで、その翌日。学校の廊下でまたもや遭遇した3人だった。家が近いのだから、当たり前と言えば当たり前。
「って同じ中学かよ!」
「えへへ」
「あっはっはっは!」
 こうして、里紅、黄依、蒼、3人の親交が始まったのだった。


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