スペシャル☆プリン-1
勝手知ったる姉の家。
インスタントコーヒーを入れた白いマグカップはもうすでに私の物となっている。
4つ上の姉は早くに結婚して家庭を築き、早いもので姪の律美も高校生になる。
ポットのお湯を注ぐとキッチンに差し込む日射しが、白い窓枠に置かれたグラスの中のポトスの葉を深い緑に照らしていた。
白いダイニングキッチンは清楚にして、くつろげる生活空間というものなのだろう。
さっきも言ったけど、姉は私より4つ上にして家庭を築いた。
心なしか、ぶらぶらしてる私より十ぐらい離れて見える。
どちらがいいかって問われたならば、やっぱり独身で若くいる今の方がいいと私は思う。
それは多分。
親元住まいの気楽さと居心地のいい姉の家を共有しているからそう思えるのだろう。
姪の律美には生意気にちゃんと彼氏がいて、これがまた変わった子だった。
リョウタと言ったかリョウジと言ったか…
どっちでもいいけど、私たちはリョウと呼んでいる。
とにかく、いまどきの男の子に珍しく典型的なマス男で彼女の親にもう、べったり…
いまどきの子だからこそ、従順で人なつっこくて図太く育っているのかも知れない。
もちろんいいヤツだし、決して嫌いではない。
ましてや私の男でもないわけだけど…
私としてはこの従順さがどうも頼りなく思えるのだった。
… … … …
さて、ある夜の事。
私は帰りに立ち寄ったコンビニで、このリョウの姿を偶然見かけたのだった。
時間はそう…
10時近くだったと思う。
[ リョウっ! ]
後ろから声をかけるとリョウは驚いて手にしていた雑誌を元に戻した。
[ チー…姉ちゃん… ]
私は事実上、律美の叔母さんだけど決してオバサンとは呼ばせない。
姉は今でも私をチーと呼び、律美にはチー姉ちゃんと呼ばせてる。
私はサチエという垢抜けしない名前があったりするのだが、サチエのチーなのか末っ子で小さいからチーなのか…
とにかく、姉は今でも私をチーと呼ぶ。