青かった日々〜兆し〜-9
「気が利かないね、直人は」
「お前もな」
大と直人は夏美の後ろ姿が曲がり角に消えたのを確認してから、お互いに毒を吐く。
「あそこは直人がなんか恰好いいこと言うところでしょ」
「なんで俺なんだよ」
「いや、真ん中にいたし」
お互いに低レベルな言い合いをしている内に、別れ道になってしまった。
最終的な議論の結論は、「夏美はなんか複雑そうだから、暫くそっとしておこう」に落ち着いた。
それがお互いに建前だと、わかっている。伊達に幼馴染みをやっているわけではない。
なんとかしてやりたい気持ちは二人も十分に持っていた。が、
「あれだけは、どうしようも無いわなあ」
果たして、自分達はどうなっていくのか。
初夏とはいえ、夕暮れ時の風は直人にとって、やたらと冷たく感じた。