【FRY】-3
「ただいま〜。お母さん」
居間に入るなり彩音は力ない声で母と呼ばれた女性に言った。
しかし、俺はその女性をみて言葉をなくした。なぜならお母さんと呼ばれるにはあまりにも若すぎるからだ。どうみても25〜27にしか見えない髪の長い綺麗なモデルの様な女性だ。
「おかえりぃ〜」
その女性はおつまみのスルメを噛みながら、彩音にそう言い、そしてすかさず俺をジロジロと見ながらこう言った。
「なんや、このミズボらしい浪人生みたいな男は?」
しかも、なぜか関西弁。
「この人は田野咲さん。紙芝居が得意な人なの」
自信満々に彩音はそう言ったが全然フォローになってねぇ。むしろ余計怪しまれるかも。
「ふ〜んっ。あっ、もしかしてアンタかっ?ウチのバイク乗り回してた男ゆうんは?もしかして傷とか付けてないやろな〜?」
おばさんは急に俺に敵意の視線を向けた。下手すれば人っ子一人殺しかねん目だ。
しかし、こんな事もあろうかとあのバイクは細心の注意を払って運転したので傷一つついていないはずだ。
「大丈夫です。傷はありません」
自信満々に言った、俺の表情を見て安心したのかおばさんも表情を和らげ、右手を差し出しこう言った。
「なんや。大丈夫なんかいなー。ほなええんや」
なんの反応も示さない俺を見ておばさんは更に言葉を続けた。
「なにしてんねん。ガソリン代金20000円頂きます。おおきにー」
「そんな金ない・・」
「ふーんっ。ほな得意の紙芝居で稼いで貰うしかないなー。あんた今日からウチで居候や」
はっ?なにいってんだ?居候?紙芝居で20000円?勘弁してくれよ!「ほな、彩音もそういうことでええなー?」
彩音も嬉しそうに何度もうなずいている。
残念ながらもう後には引けないな。居候決定だ。
「じゃあ咲クン、景気づけに一杯やろか〜」
おばさんはちゃぶ台に置かれた焼酎をコップにつぐと俺に渡した。もう未成年とか言ってらんねぇな。つぅか彩音は酒飲んでもうねちまってるし。
その後、俺とおばさんは酒を飲みまくった。二人とも顔は真っ赤になっており、一目で酔っているのが分かるほどにまでなっていた。唐突におばさんが口を開いた。
「彩音となかよくしたってなぁ〜。それからウチの名前は美夏・・やで」言い終わると美夏さんは寝てしまった。こうして俺と彩音と美夏さんの最初の一日は幕を閉じた。俺はこの夏この田舎で大切ななにかを知ることになる。とても大切な何かを