気まぐれ彼女と弱気な僕A-9
『―あぁあ―――!!‥‥やぇてやべてやめてもうだめ!やだ!イクイクイク!!!』
悠二は場所とかプライドとか全部吹っ飛んでしまったみたいに声をあげた。穴が収縮を繰り返し悠二の体が痙攣する。二回目なのにドロドロの液体が口一杯に広がった
(‥ああ、なんて可愛いんだろ)
白目向いて悶える姿すら愛しく思えた。
―情事の後、悠二はグッタリしていた。それもそうだと思う。
顔も下もグチャグチャだ。せっかく慣れないセットをした髪も乱れて潰れてしまっている。
『大丈夫?』
『‥う、ん』
『お水持ってきてあげるね』
『んー‥ぜひ』
定まらない視線でゆっくりと呼吸を繰り返す悠二は余裕を見せたかったのか口角だけあげて笑顔を作った
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『はい、お水』
『‥ありがと』
『いえいえ‥。そうだ。悠二ってチロルチョコ、好き?』
さりげなく切り出すと、驚いた表情の悠二と真っ直ぐ視線が合う。
『‥そう、だけど?』
待ってみたがそれ以上の言葉は付け足されない。怪訝そうな顔をされる。
『‥‥箱買いしたんだ。後であげるね』
(今更あたしがずっと前から片思いしてたなんてなんだか気恥ずかしくて言えない)
『ありがとう』
そんな思いに気づかないように悠二の目が細められる。見たことのないほど穏やかな笑顔
『大好きなんだ』
『そっか』
比奈子はつられて笑顔を作った。ズキッと胸が痛む。
―最悪だ。
チロルチョコに向けられた言葉なのに 勘違いしてしまいそうになる。
多分悠二にしては『あー、そう。俺牛丼好きなんだ。後カレー』という日常会話なんかとおんなじ重さしかないんだと思う。他の女の子が好きとかそういう事を言ってるんじゃない
だけどなんで苦しいんだろう。
常に受動的な悠二が能動的に発した言葉だからだと思う
所詮片思いなんだと思い知らされる
付き合ってるのだって悠二は従ってくれただけ
チロルチョコみたいに純粋に好きなわけじゃない
心臓の音が耳まで響いてる。胸がしめつけられてうまく息ができない。
チロルチョコみたいな甘くて可愛らしい女の子だったら『大好き』って言葉を貰えるのかな
―なんでこんな人好きになっちゃったんだろ‥。
(大好き)
fin