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緑原の雄姿
【その他 官能小説】

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緑原の雄姿-3

−『おはよっ!』
ある雑誌社の編集部内。いきなり、後ろから肩を叩かれた。
顔見知りの競馬担当の記者〈隆一〉だった。
『おはよぉ…』
『何だ?珍しく元気ないなぁ。いつもの攻撃性はどうしたんだ?』
『私だって落ち込む時があるんですよ。それに、人を怪物みたいに言わないで下さいよ。好きで誰かれ構わず噛み付いてるワケじゃないんですから…』
隆一とはもう、三年以上の付き合いになる。一番最初に仕事したのはダービー特集。当時、三冠馬確実と言われた本命馬の引退。落胆のムードが漂う中、何としてでも盛り上がる話題を提供したい。お互いの意気込みがリンクした。その結果、若手の中で最高の評価を受けた企画を作り上げる事が出来た。
それから何度もタッグを組んで仕事してる。しかし、今だに当時を超える評価は無いままだった。
『ところで、馬場にはこれから行くのか?』
『ええ。今日は競馬場に知人が来るんですよ。ですから、昼前には現地に着く様に、って考えてました。』
『俺はココでカンヅメだよ。G?の季節はいつもこうだ…じゃ、メインの写真、頼むな。』
『分かりました。でも、行かなくて正解かも。またオケラ街道まっしぐらになる可能性ありましたからね。』
その言葉を聞いて、大爆笑する隆一。
競馬は好きだが博打の才能はない。いつもそう思って見ている。
デスクに戻る隆一。私は急いで表に出て、バイクにまたがった。
…ブロォォォンッ!
『さ、行こうか。』
軽くタンクを撫で、機嫌を取る。バイクも馬も同じ。気分よく走らせないと事故につながる。まぁ、私の勝手な受け売りだが…
…ブォォォォォォ…
いつもの様に、エンジン音を轟かせ、目的地に向かった…

−『おっそいなぁ…』
競馬場の北側入り口前。ココでの待ち合わせ。和哉の方からの指定。そのくせ、遅刻とはイイ度胸している。
イライラしながら待っていると、目の前から二人の男性が近づいてきた。
『わりぃな、待たせて。迷っちゃってさぁ。』
やっと来た。15分の遅刻。
『遅すぎ。永久に来ないかと思った。』
『ごめんな。僕が悪いんだ。乗り継ぎ間違えちゃってさぁ。』
隣にいた男性。大学の同級生〈優作〉だった。
『優作っ!?いつこっちに!?』
『ついさっきだよ。みんなを驚かせたくて黙ってたんだ。』
優作は私達のグループの中でも異質な存在。大学で経営学を学んだ後、フランスで料理修業をしていた。
優作が昔、私達にこう言った事がある。
『僕は何でも自分でやってみたい。だからこそ、遠回りなってもこの道を選んだ。最終的に、トップに立てばイイんだから。』
私は優作の事を尊敬していたし、男性として好きだった。しかし、当の本人にはそんな意識は無かった。
【大切な友達】
私もそのカテゴリーの中に入っていた。だからこそ、優作には負けたくない。その気持ちが強かった。
『で、優作は和哉の子守役?』
『まぁ、そんなとこだろうね。せっかく帰って来ても、のんびり出来やしないよ。』
会話が弾む。久々に会った優作は、昔と何も変わってない。しかし、和みの空間の中に感じる私の葛藤。
《せめて、私に連絡くらい…》
嬉しいけど悔しい。そんな感情が交錯する。
『とりあえず、中に入ろうぜ。朋香は取材もあるんだろ?』
『う、うん。そうしよっか。』
和哉の言葉に慌てる。心の中に余裕が無かった。何とか取り繕い、私はプレス用、二人は一般入場口から中に入った。
−場内には親子連れやカップルが多くいた。一昔前のアイドルホースや有名二世騎手の存在。そのおかげで競馬ブームが到来し、客層や雰囲気もガラリと変わった。
私は取材の為、二人とは別行動。後日、時間が合う様ならいつもの店で落ち合う約束をした。
パドックに、メインレース出走予定の馬達が入ってきた。一頭ずつにピントを合わせ、シャッターを切る。フラッシュは焚かない。彼等を驚かせる要因となる。
全て撮り終わったら、直ぐ様トラックの側に移動した。ゴール前に陣取り、レースの撮影準備に入る。


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