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緑原の雄姿
【その他 官能小説】

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緑原の雄姿-2

『ねえ、どうかな?』
『うーん…何かちゃうなぁ。』
『えっ…』
『何て言うたらエエんやろなぁ…こう、何か適当な感じがするわ。』
ちょっとムッとした。辛口批評は馴れているが、あまりにも漠然としすぎてる。
『適当…?構図とかの事?』
『いや、俺は素人やからそこまでは分からへんけど…せやけどなぁ、これだけはハッキリ言わしてもらうわ。俺はこの写真、嫌いやな。』
好き嫌いに関してはよく聞く。個人的嗜好の問題もあるから、大して気にはしてない。
しかし、『嫌い』と言われた写真の中には私の自信作もある。その辺は納得出来なかった。
『何が嫌いなのっ!?』
『お、おい…そない凄むなって。あくまでも俺の好みや。俺自身が好かへん、それだけやって。』
個人的な好みに対してムキになった私も私だが、このメンツに言われると無性に腹が立つ。
『なぁ、朋香。これって引退した馬?』
明人が聞いてきた。
『違うわよっ!去年、G?勝ってるバリバリの現役馬だって。今度、海外遠征する予定なんだから。』
『ふ〜ん…何か、覇気を感じなかったから引退してるのかと思ったよ。』
『覇気が無いか。じゃ、次のレースは消しだ。』
何気ないやり取り。だがその時、私は明人の言葉の意味に気が付いてなかった…

−結局その日は11時くらいに店を出た。色々と言われた事に対しては、腑に落ちない部分もある。確かに、あのメンツは直球発言が多い。逆を返せば、勝手知ったる仲だからこそ言ったのだろう。
…ガタンガタンッ!
電車に揺られながら思い出していた。
《雑だとか適当だとか、勝手な事言って…》
また、ムカついてきた。
《アイツ等が文句の言えないくらいの写真。それを必ず撮影してやるっ!》
…プシューッ!
そう考えているウチに駅に着いた。
周辺の店はほとんど閉まっている為、街灯の小さな明かりのみが道を照らしていた。静けさが辺りを包む。気持ち悪いくらいの静寂…
『はぁ〜っ…』
何となく出るため息。今日の事は、私なりにショックだ。
自分では、充分にプロとして活躍出来てると思っていた。しかし、友人とは言えあそこまでに批判されれば…
…ブルルルルッ!
携帯が震えた。
『きゃっ!』
暗闇と静寂の中、少し驚いた。我ながら小心者だ。和哉の番号がディスプレイに出ていた。
『もしもし…』
〔おぉ、朋香。いきなり電話して悪いな。〕
『ホント、悪いわよ…で、何?』
〔明日、競馬場行くんだろ?意外なヤツ、連れてくるからさぁ。じゃ、また明日なっ!〕
そう言うと、一方的に電話を切られた。
《意外なヤツ…?》
少し気にはしたが、そのまま歩き続けた。どうせ明日になれば分かる。頭の中でそう処理した。

…ガチャッ!
『ただいま。』
返事はない。一人暮らしなんだから当たり前だ。カバンを置き、シャワーを浴びる。少しずつ涼しくはなっているが、各方面を移動しているからか毎日汗まみれだ。
『ふぅ〜。』
バスタオルだけを巻いたまま、冷蔵庫からビールを取り出す。
…プシュッ!
目の前には雄大な姿の彼のパネル。今にも走りそうな勢い。わざわざ作ってもらっただけはある。
『あのね…今日、久々に同級生と会ったんだ。そこで色々と言われちゃった…』
答えるはずのない彼。それでも続ける私。
『私の写真、雑だとか適当だとか…何がダメなんだろ?』
人前では弱みを見せない私。でも、彼の前では素直になれる。
『ごめんね…変な話して。明日も早いから寝るよ。おやすみなさい…』
一気にビールを空け、そのままベッドに潜り込んだ。しかし、私の頭の中には、彼等の言葉が残ったままだった…


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