僕とあたしの海辺の事件慕 第二話「不可解な出来事、しばし」-21
「って、あれ? 紗江さん、服……」
身体のラインが見えるという事はつまり……裸。
後ろ髪を引かれる気持を抑えつつ、真琴はばっと後ろを向く。
「どしたの? ……あ、もしかして服? あはは、私は水着だよ。濡れると思ったからさ、着替えてきたのよ」
「なんだ、そうだったんですか……」
淫らな妄想を見抜かれるのは間抜けで恥ずかしいが、一方で水着を着ているというのであれば見ても問題はない。
真琴の中で急成長する男心というかスケベ心が前を向かせる……が、
「あ、あれ?」
振り向いた先、紗江は布らしきものを片手に掲げている。
「今度はどうしたの? 何か変?」
「いえ、別に……」
雲から出た月が照らす岩場にはオレンジ色の布が一枚。それはエナメル質でよく光りを反射していた。
「あ、でも……」
彼女の足に目を向ける。
きらびやかなイミテーションの付いたパンプスと水の滴る脚。
さらに上を見る。
ムチムチとした太腿は内勤の仕事だけあって色も白い。けれど、一部分、わかめのようなもじゃもじゃした黒がある。
もう少し上。
きゅっと締まったウエストに窪んだオヘソ。特に布地は見えないが、おそらくビキニだったのだろうか?
そして……、ふっくらとした女性の特徴、上向きの突起とお椀方乳房。それは何にも隠れていなかった。
「なん……で?」
「言ったじゃない? 需要があるってさ……」
岩場を蹴るパンプスの踵は波しぶきの音にかき消されること無く真琴の耳に届いた。
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本能に逆らい目を背けるも、彼女の裸があるという事実に下半身はしっかり反応してしまう。
――僕ってどうして……、澪のことが好きなんじゃないの?
本当に好きなのは澪。けれど、ここ数日自分と距離を取ろうとする彼女。
――恋人になれたはずなのに……。
それがいつの間にか翻され、幼馴染に降格。それどころか浮気者扱い。
真琴にも彼なりの理屈、いい訳もあるというのに澪は聞く耳を持たず、仲違いしたまま。
「真琴君、考えることないじゃん。すっきりするチャンスだよ? 澪ちゃんご機嫌斜めだし、でも真琴君のオチンチン、おっきくなってるじゃん」
昼間二回ほど射精したとはいえ、大好きな澪と四六時中一緒。それどころか可愛い人、綺麗な人、年上の人、ズルイ人。
フンワリした甘さ、酸っぱさのある匂い。女性の醸す体臭が彼の欲望を擽り続けていた。
「そんなの……だめです」
なけなしの理性を振り絞り、真琴は背を向けて布を差し出す。