永遠の誓い-5
グスンッ…
早くも涙腺が緩み始めた私は、目の前の素敵な先生の笑顔が霞んでしまったことを残念に思い、自分の泣き虫を恨んだ。
ママは、私と先生の顔を交互に見ながらニッコリ微笑むと、先生の手から赤いビロード張りの小箱を受け取った。
『さぁ…神聖な儀式の始まりよ!先生から、由里子の左手の薬指にはめてあげて』
ママが小箱のふたをそっと開けると、そこにはピンク色の石の付いたリングが、キラキラと優しい煌めきを放っていた。
先生はその小さなリングを大事そうに手に取ると、『由里子…俺のお嫁さんになってくれる?』と私に聞いた。
「うん…」
私はそう言って頷くのが精一杯だった。
だって、その時の私はすでに感極まってしゃくりあげ始め、言葉にならなかったから…
先生は、私が頷いたのを見届けると、エンゲージリングを、私の左手の薬指にはめてくれた。
「先生…ありがとう…」
先生は、私の背中にそっと腕を回し、優しく背中をさすってくれた。
そして、背中をさすったまま耳元でこう囁いた。
『今夜…由里子をさらう…』
え………っ?!
私は嬉しさを噛み締めていた最中だと言うのに、突然発した先生の言葉に戸惑い、顔が真っ赤になっていくのが分かった。
もう―――先生の意地悪!
なんでこのタイミングで、そんなこと言うのよ〜〜〜!!
先生は、恥ずかしくて顔を上げられない私を抱いたまま、何事もなかったようにママの前で素敵な王子様を演じている。
もちろん事情を知らないママは、少し離れたところからニコニコと優しい微笑みで私達を見守っていた。