近距離恋愛−vol.1-3
「いいよ。このベット使って。俺はソファーで寝るから。」
先輩は意外にも紳士だった。
性格悪いって噂はデマ?
「え、いいです!私がソファーで!」
「女の子、ソファーで寝かせられないから。」
「いや、でも……。」
「何?一緒に寝たいの?」
笑いながら先輩は言った。
照れたり、冗談言ったり、どっちが素なのかわからなくなる。
「え?!いや、その。」
「冗談。いいから、ベット使え。」
「じゃあ……すみません。」
「はいはい、おやすみ。」
そう言って、先輩は部屋の電気を消した。
勇の浮気、先輩の優しさ、気付けなかった私のうかつさ、そんな事を考えているとだんだん泣けてきた。
すぐそこには、ソファーからはみ出た先輩の足が見える。
私は、気付かれないように声を押し殺して泣いた。
私一人じゃ満足できないのか!
と思いながら感傷に浸っていると、急にゴソッ物音がした。
「……泣いてんの?」
先輩はそういうと、ソファーから降り、ベットに腰かけた。
「……泣いてません!全然平気!」
涙がバレないように、私は布団を頭までかぶり、努めて元気な声を出した。
バサッと音がして、視界が急に天井になったと思うと、先輩の顔が目の前に広がる。
「やっぱ、泣いてる。」
先輩は、私の横に入って、私をギュッと抱きしめながら、
「今日はこうしててやるから。泣いていい。手は出さない。」
先輩の顔は見え無いけれど、胸からは鼓動の早さが伝わってきて、なぜか涙はすぐにやんだ。
「先輩、ありがとう。」
私はそう言って、先輩の背中に手を伸ばした。
やっぱり、性格が悪いなんて、ただの噂。
抱きしめられた瞬間から、私の頭の中は、勇のことが消えかかり、大半を先輩で占めていた。
−多分10分ぐらい過ぎて。
本当はもう少し、短かったのかもしれない。
「……先輩」
「ん?」
少しかすれた声で返事をした先輩に、私はもう恋していたんだと思う。
「あの、ね。その……」
「なに?」
優しい声に胸がキュンとする。
「あたってる。」
「……そら、男だから。手出さないよ、安心して寝な。」
少し間を置いて、照れながら、頭を撫でてくれた先輩に、私はたまらなくなった。
「……先輩。」
私は、先輩の背中に回していた腕をほどき、先輩の顔が見えるまで移動した。
「どした?」
言い終わるか、終わらないか、それぐらいに私は、先輩にキスをした。
熱いキス。
「…んっ。はあ……。」
思わず声が漏れる。
「おまっ!人が必死で抑えてんのに……。」
そう言いうと先輩は、私の上にのり、また唇を重ねる。
「……んんっ。」
もう、先輩しか頭になかった。
傷心の所に優しくされたからかもしれない。
でもそんなこと、もうどうでも良い。
私は、先輩が好き。