【気まぐれ彼女と気弱な僕と】-5
『‥はひ?』
乱雑に脱ぎ捨てられた自分の衣服、ベタベタの床、と、飲み散らかしたビール瓶
『‥ちょ、比奈ちゃん、未成年、だよね‥』
『戸籍上は。つか、食料少ないね。冷蔵庫にビールと魚肉ソーセージしか入ってないとか笑っちゃった』
『‥まぁ、それは』
悠二は言葉を濁した。そんな指摘をされても困る。明日死ぬつもりの人間の冷蔵庫に一週間分の食事が入ってたりなどするものだろうか
ただ腐らせるだけである
『あたし、カレー食べたい』
『‥は?』
(何言ってるの?)
『買い出しに行くからさっさと服着て』
随分と上から目線だ。大体 脱がせたのは比奈子だろうと思うが 敢えて口にしない
『‥あ。それは抜いちゃダメだから』
不意に比奈子が近づいてそう言った。柔らかく笑う比奈子に意識を取られている隙に魚肉ソーセージが奥まで押し込まれる
『‥ぅぐぁっ』
いくら先ほど慣らされたとはいえそう簡単に受け入れられるわけもなく、中のきつさに色気のない声が出てしまう
さすがに苛ついて涙目で睨むと頭を撫でられあやされる
『段々ヨクなるから我慢して?』
上目づかいの比奈子は可愛くてもうどうでもよくなった。涙目で頷くと、おでこにキスされた
なんだかんだで命令されて従うのは嫌いじゃないみたいだ
『内股やめなよ、変だよ』
清楚な白のニットにピッタリしたジーンズを合わせ、カレーに使う野菜を品定めしながら 颯爽とカートを押す比奈子
その隣でダボダボのトレーナーにスウェットという出で立ちで 必死に比奈子の後を内股ぎみで追う冴えない男
『‥ゎ、かってる!』
そうは言いながらも比奈子に急かされ近くのスーパーだし‥と部屋着から着替えたり、身だしなみを直したりする事を省いたのに酷く後悔する
内股なのは尻にささった魚肉ソーセージが気になってしまうからだ。しかも たまに妙な所にあたるものだから 声が出そうで心配になる。また 他人に解ってしまうのではないかと ドキドキして顔は紅潮し キョロキョロと挙動不審だ
『端からみると変質者とつけ狙われてる中学生かもね、あたし童顔だし』
クスッと比奈子が笑った所で 警備員風の男が通った
話しかけられ閉口し青ざめてしまう悠二と正反対にケロッとしてる比奈子
比奈子は可愛らしい表情をちょっと困ったように曇らせ
『昨日まで引きこもってた兄なんです』
と答えた
滅茶苦茶な理由だ。少しムッとして比奈子を睨むが 警備員は同情じみた顔になりその場を離れていった
(納得しちゃうの?それ)