白銀のたまご〜パチプロチーコの生活2-1
その日は無難な台を選んで座ったのにさっぱり冴えなかった。
この台は前日、前々日と決してよくはないけれど、大当たり回数を客付きで考えたらそんなに低い数値でもないと思ったの。
きっと釘がシブくて客が居つかなかったのね…
機械の性格からして大爆裂が望める時期ではないけれど、このホールでは稼働の均等を取るために4日目には釘を開く傾向があるのよ。
回ってさえくれれば、慣性をもって妥当な大当たり回数は望めると思ったのに…
まるで夜のシゲルみたいに一発こっきりでさっぱり出ない。
そろそろ退散しようかしらと思った時にノーマークだった一台が気になって足を止める。
本当はこれが一番イケナイのよね。
誰だって負けは認めたくないし、イヤな気分は今までさんざん味わってきたんだ。
でも、こんな時にはあっさり負けを認めるのがプロなのよ。
そりゃ逆転ホームラン打てる事もたしかにあるけれど…
得てして、こんな時は傷口を広げる結果に終わってしまうのよ。
なぜなら、それは冷静な判断力に欠けるから…
たとえばあなたが2万円負けていて、台を代わったところで運よく1万円取り戻せたとするね。
ここは冷静に考えて運よく半分で済んだと考えるものなのよ。
でも、実際にはまだ1万円負けてるわけじゃない?
一生懸命働いたお金を1万円もムダにしちゃったと思うじゃない…
そんな事ではとても勝てないのね。
いい時もあれば、必ず悪い時はあるわけじゃない?
悪い時に1万円で済んだと思えば儲けものと考えるのよ。
そもそもプロは後から取り返しが難しくなるほど注ぎ込んだりはしないわ。
負けたままじゃ、どうにも納得いかないって?
そりゃ誰だってそうよ。
でも、その場その場の勝ち負けよりもっと大切な事があるのよ。
私たちはパチンコしかする事がないので時間には不自由しないけど、一番大切な事は常に次のチャンスに繋がなければ生き残れやしないって事。