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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯4/ステップアップハートビィト-9

薄目を開けると、僕の目に飛び込んできたのは、冬にしては露出度の高い服に身を包んだ長身の女性……

「じゅじゅ十兵衛!何でここにいるんだよ〜」
ドガッ!!っと腹を思いっきり踏んづけられる。
「こぉらぁ〜“先生”だろうが阿呆餓鬼が!」
腹を押さえてのた打ち回ると、ガゴッ!!っとベンチから滑り落ちた。
「ててっ…たく相変わらず容赦ないんですねぇ“先生”!」ストン!と今度は頭にチョップ。
「皮肉が込められている、可愛くない。それに丁髷無しは減点5だ。」
「あれ面倒くさいからやめようかと思う今日この頃でして…」
またストンッとチョップされた。
「だから何!」
「昔はあんなに姉ちゃん姉ちゃんと慕ってくれていたのにな」
「何年前の話だよ…」
なんか今度は頭をクシャクシャッとされた。

十兵衛…先生は櫛で僕の髪を梳いている。
僕が丁髷頭を始めたのは、この十兵衛こと“柳生みこと”先生の影響だ。
昔、ポニーテールだった先生の髪型が侍のソレに見えて、僕にもやってくれと言ったのが始まりだった。
数年前、僕らは同じ道場に通っていたんだ。
家も近所だった僕らは良く二人揃って道場に通い、一人っ子の僕は面倒見の良い彼女を本当の姉のように慕っていた。
それが数年前までの話。
先生は学校が忙しくなり、そして教員職を夢見ていた先生は東京の大学へ……。
それから、最近になるまでは音信不通だったんだけど……
最近ばったり!というか、海都学園の社会科教師として、この町に戻ってきたんだ。

「……怒っているのか?大変な時期に、大事な時期に側に居てやれなかった姉ちゃんを…。」
「何言ってんだよ。もう子供じゃないっての!」
昔から面倒見が良いというか責任感の強い人だ…先生には向いてるだろうなと、彼女の夢を知っていた僕は、その当時からそう思っていた。
「…しかし、私は感心してるんだぞ?あれほど怖がりで寂しがり屋だった茜が一人暮らしを続けているとはな。」
(いつの話してんだよ〜やめちくり〜)
だんだんと顔が熱くなってきた。
「無理してるんじゃないのか?」
「何が?」
先生は髪を梳きながらも話を続ける。
(……はぁ…)
「茜は昔から我慢強い子だったからな。いじめられていても自分だけで抱え込んでいたじゃないか。」
「知ってたのかよ?」
(その事はもう忘れたいんですが)
「うん。だから私は…」
「…もう俺大丈夫だし…気にしないでよ。」
実際、僕は気にしていなかったし、その事で誰かに負い目とか感じてほしくないんだよ……
「もう何年も前の話だろ?一人暮らしにもいい加減慣れたもんだよ。」
「そうか?まあ何かあったら何時でも話しに来るんだぞ?というか、何でこんな場所に来てるんだ?…まさか!」
「も、もう剣道する気はないからね。」
「そうか…残念だな。私よりも才能があると言うのに…」
ちなみに先生は剣道、弓道、棒術で段持ちな女丈夫である。
「昔っから言ってくれてるよね、『おまえには凄い才能がある』とか『茜は天才だ』とか…昔は随分励まされたもんですよ。」
「私は本気だったんだぞ?」
いい加減長い…何がって?髪を梳くのがだ。
「いや、もう未練とかないし、自分が悪いんだし。」
「私だって、おまえが望みさえすればだなぁ…」
「…」
先生はそこで言葉を止めた。何度言っても同じだと感じたんだろう。
「…ゴムは何色がいい?ピンクに赤に黄色に白に…オススメはこの虹色だが?」
なんでラメ入りの女物ばっかなんだ…
「じゃ…じゃあ、赤で…」
「ははっ!冗談だ!この黒がある!」
「ああ、うん。」
だけどそれは…やはりラメ入りでキラキラしていた。

「うん、可愛い茜の出来上がりだな!」
「この年になって可愛いとか言われるのって、何か複雑なんですが…」
「そうか?いくつになっても茜は私の可愛い弟だよ?」
スリスリ…スリスリ…何か頬ずりされました。


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