初恋はインパクトとともに ♯4/ステップアップハートビィト-3
「どうしたんですか姫?」
その言葉にハッと我に返る…
(しまった…またか)
「ど、どうかしたのか?」
「いや…顔を青くしたり赤くしたり…悲しそうにしたり笑ったり怒ったり…だから、その…気になって。」
(うむぅ…私としたことが全て顔に出ていたとは…アカネめ、今度会ったらとりあえず一発…ふふふ)
彼の顔を思い浮かべると自然と笑顔に…
やはり今日の…いや最近の私はどうもおかしいな。
可笑しいって?私の正拳突きは痛いぞ?
(今日の姫様ってなんだか…)(姫…なんだかいつもと違って…)(なんか…)
((かわいい〜萌え〜))
何故だか気が付くと我が校の集まりは皆が笑っていた…にやけていた…
なに?原因は私だって?
(うむぅ…)
「では着替えて開会式に備えるとするか…」
誰も聞いてなさそうだったが、私はとりあえず更衣室に向かうことにした…
「姫様お供します!」「お着替え手伝わせてください!」「姫の柔肌をお守りせねば!」「…ぁぁんお姉さまぁ…そんなとこ…」←妄想中「お姉様ったら意外とウブなんですねぇ…」←妄想中「フヘヘヘ…」←…「グヘヘヘヘ…」←……「…はぁはぁ…」←もうすでに…
とか何とか取り巻きが勝手なことを叫んでいた(言葉通り叫んでいた…)がとりあえず無視した!逃げた!全力で!…とりあえずあらんかぎりの脚力を使って!
まぁ、ウォーミングアップだと思えばよいか…と。
(ははは…笑えない)
更衣室に入ると私は真っ先に鍵を締めた…
「ふぅ…まったく」
私は深い深いため息をついた……
「ため息をつきたいのは私のほうかも…」
「……相変わらず神出鬼没な奴だな…」
出会ったころから八雲にはこういう所がある…
私の背後を奪えるのは同学年ではおそらく八雲だけだろう…
今もいつの間にか先回りしているし…
「姫、また“彼”のこと考えてたのね…心ここにあらずって感じよ?」
「べべつに奴の事など!そもそも何故に試合前にアカネのことなどを?!」
(ホンット分かりやすい子だわね。)
「あなたは自覚ないだろうけど、朝比奈くんの話をしてるときのあなたって目の輝きも顔も違うのよ?」
「そ、そんなこと…あるのか?まさか!」
「まさかもくそもあるわよ…いかにも恋する乙女って顔して話しちゃってるくせに…竜童児晶も愛する男の前ではか弱き一人の乙女ってことかしらねぇ?」
「ぁぁあ愛するぅ?」
八雲のふざけた?言動に思わず声が裏返ってしまった。
「言い方が悪かったかな?でも、嫌いなはずないわよねぇ?ふっふっふぅ!」
(嫌な笑顔だなぁ…)
「うむぅ…正直分からないんだ…その、初めての感覚だから…な」
(なに言ってるんだ私は…)
「でしょうね…あんた男よりも女にモテる人だし…それに体の発育も遅れてるし、ぶっきらぼうだし、不器用だし、料理も家事も洗濯もできないし、それにこれにあれに…」
…五分ほど経過…
「なんか…結構ヒドい事を言われてる気がするんだが?」
「えぇ、言ったもの…私が言わないと誰も言えないじゃないお姫様?」
ただの皮肉ではない…と思う。多分、私のことを思っての言葉だろうが…
(そもそも私のあだ名が姫なんかになったのはこの女のせいではあるのだが…)
なんだかんだ言って彼女は“私”を理解してくれている数少ない人間だ…
周りは一歩二歩ひいた所からしか私を見ようとしないが、八雲は対等に物事を考えてくれる…
私にとっては貴重な存在だ。
サワサワ…
と…誉めすぎるのは良くなかった。
ムニムニ…
この八雲という女には…
「ふむふむ…最近ちょ〜っと女っぽさが増したかなぁ〜なんて思ったりしてたんだけど…ただの気のせいだったみたいね。」
八雲は、さらしの上から私のその…あれやあれを触りつづけている。
触りかたがかなりネチネチしているのが、なんかその……
「お、お、おまえという奴はぁ!」
「色仕掛けとかはやめといたほうが良いわね…うん、ナイスアドバイス!」
「貴様!いつまでぇ〜!」
っと、腕をつかんで投げ出そうとするが…“いつものように”スルッと交わし、クルッと着地する八雲…
一説によると、八雲はその手の…つまりは忍者の血を引く家系の者らしい。
あくまで噂だが…。
「だって可愛い姫を見てたらさぁ…私…私ぃ…はふぅん」
「ハハハハハ…試合前に一仕事できてしまったようだなぁ〜」
ゴゴゴゴゴと殺気が増大していくのが自分でも分かる。
「ダメよ姫、怒りっぽい性格は治さないと…彼に好きになってもらえないぞ?」
「うむぅ…」