「瓦礫のジェネレーション」-37
さらに翌朝。
裸の上に健志の白衣を羽織ったかおりが、健志のパソコンを覗き込んでいる。健志がカフェラテを運んできた。
「そういえばかおりはメールとかやらないの?」
「あれ、お金かかるから。うちはそんなに裕福じゃないから、お小遣い少ないんですよ」
「そうか。そういえばおふくろさん、中条記念病院に勤めてるって言ってたよな」
「ええ。ホスピスの婦長さん、っていうか今は師長って言うんでしたっけ」
「そこの院長のこととか何か噂で聞いたことある?」
「なんか女好きでセクハラも結構あるとか言ってましたよ」
「……それ、俺の親父」
「え?……じゃあ、愛人の息子ですごい二枚目だけど大学入ってからグレちゃったって……?」
「そう。後妻に男の子が出来たんで邪魔もの扱いされたからこんな風にグレちゃったって訳。まあ『すごい二枚目』かどうかはわからないけど。それにしても随分な言われようなんだな、俺って」
「噂なんかどうでもいいです。私の知ってる健志さんが本当の健志さんですから……」
かおりは初めて笑顔を見せた。
(こいつ、えくぼなんかあったんだ……)
健志はカフェラテを飲むことも忘れ、目の前のかおりに見とれていた。