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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-38

第四章「嫉妬」



「まあ座れよ。堅くなるようなガラでもないだろう」
輿石岳人は陸を見かけると声をかけた。与党民政党の大物代議士輿石寛一の長男で公設第一秘書の岳人は、陸にとっては8つ上の兄である。
「珍しいな、陸の方から連絡よこすなんて。美咲ちゃんは元気か?」
「まあまあかな。それより兄貴、なにもこんな高そうな店で待ち合わせしなくても……」
「こういう店の方が秘密を守るにはいいんだよ。心得てるからな、店の人間も。お前から連絡よこすってことはそれなりにヤバい話なんだろ?いつかの大学生……渋江って言ったっけ、あれをもみ消した時みたいに」
ああ、そうだった。あの時も美咲を守るために俺は兄貴の力を借りたんだった。そして今度も……偉そうなことを言っても結局誰かの力を借りないと女独り守れない……、陸は自分の無力さが辛かった。
「それにしても、いい加減に家に戻ってこいよ。俺よりもお前のほうが世程政治家向きだと思うぞ、親分肌だしな。俺はどっちかというと参謀向きだから、今の秘書の仕事は気にいってるけど、親父の地盤を継ぐような器じゃないし」
「その話はいいよ、兄貴。それより本題なんだけど……塩飽のおじさんの会社に、市丸っているの知ってるか?」
「市丸良平か?中々ヤリ手だと聞くけどなんか嫌な噂もチラホラあるな。そいつがどうしたんだ?」
「美咲がレイプされた」
「……! お前さっき美咲ちゃんは元気だって……」
「まあまあだって言ったんだよ。とりあえず精神的なケアはしてるから今のところ落ち着いてる。それはともかく、ちょっとひっかかることがあるんだ」
「なんだ?」
「まず動機。普通に考えたら社長の娘をレイプして会社に残れるなんて考えるはずがない。ましてや美咲が気が強くて泣き寝入りなんかしなさそうなタイプなのは、普通なら一目でわかる」
「……確かにそうだな」
「確か兄貴と同い年くらいだろ?その年で社長室長ってことはかなりうまく立ち回ってきた筈だから、女のことで出世を棒にふるなんてドジ踏むようなことはまずあり得ないと思うんだ」
「なるほど」
「まあそっちは、俺も心当たりがないでもないから、兄貴を煩わすことはないと思うんだけど」
「そうか。で、他には?」
「薬物だ」
「薬物?デートレイプドラッグだな。GHBか?」
「調べたわけじゃないからはっきりとはわからない。ただ、少なくともこのへんで簡単に手にはいるシロモノではないと思うんだ。ここらのチンピラ程度だったら俺等が押さえてるからクスリ関係には手出しできない筈だし」
「なるほど。マル暴絡みってことだな。でなければ第三国関連か。市丸がそのテの取り引きに絡んでると睨んでるのか」
「そういうこと。もしそうだとしたら、塩飽のおじさんにも美咲にもかなりマズいことになる」
「となると親父もタダじゃ済まないだろうな。わかった。調べてみるよ」
「悪いな、兄貴。いつも無理ばかりで」
「いや、これは重要な話だ。情報ありがとう、陸」
「そういえば兄貴、まだ結婚しないのか?」
「いや……もうそろそろだとは思ってるんだよ。美奈子もいつまでも待たせておくわけにもいかないだろうし。ただな、親父がなあ……」
「まだ諦めてないのか?美咲と兄貴の縁談」
「美咲ちゃんにはもう彼氏がいるんだって言ってるんだけどねえ。まさかお前だとは言えないけどな」

美奈子……その名前を耳にして、陸の胸に苦い思いが蘇る。初めて愛した、将来を誓った筈の4つ年上の女性。留学先のボストンで知り合った樺沢美奈子とは、彼女が日本に帰国する前の半年間、一緒に暮した。1年半早く帰国した美奈子に会いたくて、彼女が帰国した半年後に一時帰国した陸は、そこで美奈子が父の私設秘書になり、兄・岳人の恋人となっていたのを知った。


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