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「瓦礫のジェネレーション」
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「瓦礫のジェネレーション」-36

「痛えな、健志さん。でも、俺も悪かったです。健志さんの大事な人だって知ってたらこんなことしなかった。申し訳なかったです」
「いいよ、わかってる史哉。俺こそ殴ったりして済まなかった。それより陸さん呼んでくれないか?」
「了解」
史哉はそそくさと下着だけを身に付け、携帯を手にすると陸を呼び出す。
「陸さん、1時間くらいで来られるって」
「じゃあ史哉、葉子を見ててくれ。俺はかおりを……。葉子、手錠の鍵を出せ」
葉子がしぶしぶ鍵を渡す。それを受け取った健志は、かおりをシーツにくるんだまま抱き上げて隣の部屋へ運んでいった。

「ごめん、かおり……俺のせいでこんな……」
かおりの足下に跪いて手錠を外す。それから目隠しと猿ぐつわをほどいて、腕を縛っていたガムテープを剥がす。
「痛いところはないか?ごめんな……こんな…こんな……」
跪いた健志の肩が震えている。目隠しを外されたかおりの目に最初に映ったのは、唇を噛み締めて嗚咽をこらえる健志の姿だった。
かおりは混乱していた。呼び出したのは健志ではなかったのか?
(泣いてるのは私のため?どうして?それにさっき、「愛してる」って……)
「着るものを取ってくるよ。あと、なにか飲むものもいるよな。ごめん、俺、こんなことしかしてやれない……」
多分もう顔も見たくないと思われているだろう。そう思った健志は部屋を出ていき、トレイに乗せたおしぼりとミネラルウォーターのボトル、きちんとたたまれたかおりの制服を部屋の入り口に置くと、中には入らずにドアを閉めた。

しばらくたってようやく陸が到着した。
かおりのいる部屋のドアの前で、健志が肩を落として座り込んでいる。陸の顔を見ると、つらそうにつぶやいた。
「陸さん、俺、悔しい……情けない……守ってやれなかった、かおりを……」
「健志……とりあえず今日はもう帰れ。葉子のことはこっちで始末つける。彼女は美咲に送らせるから……」
「すみません、陸さん。後頼みます」
健志がようやく立ち上がって帰ろうとした時、ドアが開いた。制服を身につけたかおりが立っている。健志はあわてて顔を背けた。あわせる顔がない。それ以上に、今顔を見たら抱き締めずにいられる自信はなかった。
「あの……健志さん、送っていただけますか?」
かおりの口から出たのは信じられない言葉だった。
(なぜだ、かおり……そうか、俺にはもう家を知られてるから仕方ないけど、他の奴にまで知られたくないのか……)
「わかった、送るよ」
やっとの思いでそう言うと、二人でマンションを出た。

車の中の二人は重苦しく沈黙していた。最後にもう一度だけでも抱き締めたい……健志は自分の気持ちを抑えるのに懸命だった。かおりを家に送り届けたら、あの指輪を捨てよう……かおりを思い出させるものをいつまでも持ったままでいられるほど自分は強くない、そう思った。
来るときとは逆に、かおりを送る道のりはやけに近く感じられた。本当にもうこれが最後だから少しでも長く同じ空気を吸っていたい……そんな願いも空しく、車はあっという間にかおりの家に着いてしまった。
「もうこんなことは絶対にさせないから。ごめん。今度こそ本当に、さよなら」
健志は顔を見ないようにしてやっとそれだけ口にした。

その直後。
「……!」
かおりの唇が健志の唇に触れた。1秒、2秒……15秒後にやっとかおりの唇が離れた。健志は呆然としてかおりの顔を見つめる。
「かおり……」
「私のこと、愛してるって言いましたよね、さっき」
「……」
「だったら私も言います。抱いて下さい。今」
「……ダメだ。早く家に帰れ」
(そうだ。最後に1回だけなんて辛すぎる。やっと諦めたんだ。決心をぐらつかせないでくれ)
健志は顔をそむける。頼む。早く立ち去ってくれ。
「……今だけじゃなくて、これからずっとでもダメですか?」
かおりの目が不安げに健志を覗き込む。
何がダメなものか。健志はかおりを抱き寄せていた。


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