『てらす』-19
「あっ、あああああ!」
ぴちゃぴちゃ。
ざらざらとした舌の感触。
鼻につく唾液の臭い。
「いやあ」
老人が私の耳を嘗め回している。
「ひぎい!」
不意に動き出す兄の肉棒。
生傷をかき回されるように、小刻みに兄が動き出す。
「痛っ! や、やめて、兄様!」
「はぁ、はぁ、すごいよ、媚娘」
目から涙が溢れ出す。
相変わらず頭の中には老人の舌の音が響いている。
股は槍で貫かれているかのように痛い。
ぽたぽたと、先ほどとは違った赤い液体が床に垂れていく。
痛い。
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
「…すごく綺麗だ。媚娘」
狂喜に歪んだ兄の表情。
見開かれた兄の瞳には、涙と涎を流した私が写っている。
やめて、兄様。とても痛いの。
そう口に出そうとしても―。
「あっ…がっ…」
私には人とは思えぬ呻き声を出すことしか出来なかった。
気の遠くなるような痛み。
耳で感じるざらざらとした舌の感触。
乳房に垂れる兄の汗。
天井に吊り上げられた手首が悲鳴をあげる。
「ひいっ、も、やめっ、ふぁっ」
兄は狂ったように腰を動かし続けた。
まるでその行為しか知らないかのように。
その都度、繰り返される言い様のない痛み。
今まで一度も感じたことない、心を引き裂かれるような、後ろめたい痛み。
痛いだけではなく、悲しくて。
「うっ、あうっ、いやっ!」
どんなに涙を流しても、兄は私に腰を打ちつけ続ける。
その濁った瞳には、もう私は写っていない。
狂気に支配された兄は、ただ己の快楽のためだけに腰を振り続ける。
「すばらしい。お美しいですぞ、媚娘様」
気色ばんだ老人の声。
狂った色魔め。
私は必死に堪えた。
自分の中に感じる異物を。
必死に腰を振る兄には、私の痛みを知らないのだろうか。
こんなにも苦しいのに。
兄の動きに合わせて、揺れる私の身体。
振り切れんばかりに揺れる乳房は、取れてしまうのではないかと思うほど痛い。
「ひっ、ふぁっ、あぎいっ―!」
色あせぬ痛覚。
息も出来ないほどの圧迫感。
「うっ! ああ、媚娘! 媚娘!」
不意に兄の動きが早くなる。
肉と肉がぶつかり合う音。
粘膜と粘膜が、息つく暇もなく擦りあって―。