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『てらす』
【歴史物 官能小説】

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『てらす』-20

「あうっ、いやっ、はげし、いい!」

突然、乳首を抓まれた。
老人の指。
狂ったように笑い声をあげている。
感覚が―。
怒涛の流れとなって、あふれ出す。

「ああっ、媚娘! いくよっ!」

「いや、だめっ、兄様! いやああああああ!」

拡がっていく。
熱いものが。
私の中に、溶けた鉄を流し込まれたかのように。

「あ、ああ…」

小刻みに震える兄の姿をぼうっと眺めながら。
私は聞いたのだ。
壊れていく音を。
私の心が、音もなく砕けていく音を。

「媚娘…」

そう呟いた兄が崩れ落ちていく。
全ての力を使い果たしたかの様に。
兄に支えられていた私の身体も、冷たい床へと落ちた。
先ほどまでとは比べものにならないほどの些細な痛みを感じる。
尻に当たる冷たい床。
火照った身体には丁度良い。

「……」

酷く身体が気だるい。
限界を超えた頭は、腫れぼったくなってしまったかのように重い。
何も考えたくなかった。
耳に聞こえてくるのは、ただ己の息遣いのみ。
そうすると、世界がびっくりするほどの静寂に包まれていた。
ひんやりと薄暗い土間の片隅。
そこに私は縛り上げられていて。
窓から差し込む青い月光に、わずかばかりの灯火さえ消えてしまっていることに気づく。
土間の天井付近にある窓。
何度か、融があそこから顔を出して、私を呼んでいたことがある。
今、そこからは青白い月が見えるだけで―。

「あ、あれ…?」

私は今日、何か融と大切な約束をしなかったか。
頭が重い。
本当ならば、私は夜中に寝静まった屋敷から抜け出して、この土間で―。
ぼんやりとしていた記憶の欠片が少しずつ集まってくる。
この窓から月が見えると言う事は、もうすでに時間は―。
不意に違和感を感じる。
体内からゆっくりと流れ出す、どろどろとした液体。
月明かりに照らされたそれは、私の股の下で白く、赤くきらめいて。
その絶望的なまでの色鮮やかさに。

「うっ、ひっく―」

私は静かに涙を流した。
なんで?
感情が溢れ出す。
守ってくれるって言ったのに。

ぱんぱん。
突然、手を叩く音がした。
それでも、顔を上げる気になれなかった。
ただ、悲しくて。


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