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強引な恋
【青春 恋愛小説】

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強引な恋-6

あっという間に終業式の日がやってきた。今日で当分、奴と2ケツすることも、毎日一緒にいることもなくなっちゃう。夏休みに入るのに、なんだかぱっとしない気分。数ヶ月前のあたしじゃ考えられない。上の空のまま終業式、ホームルームと終え、教室で奴が来るのを待つ。いつもはすぐ来るはずの奴が今日はまだ来ない。教室にはもう数えられる程の人数しか残っていない。ホームルームが長引いてるのだろう。そう思ってあたしは奴の教室に向かった。あたしから迎えに行くなんて喜んでくれるかな、なんて考えて一人でにやけていると、奴が教室からちょうど出てきた。「た…く??」奴の名前を呼びかけたあたしは目の前の状況に頭が真っ白になった。隣にはあたしじゃない、知らない女。楽しそうに笑ってる奴。引き返そうとすると奴はあたしに気づいて、走って追いかけてきた。
「えなちゃん!!来てくれたの?ちょうど良かった」
「…今日は一緒に帰りたくない」
これじゃだだこねてる子供と同じじゃん、あたし。
「あれーもしかして妬いてるの?」
「ばか!!そんなはずないじゃん!!あんたと帰りたくないだけ!!」
あたしは本当のことを言われてついむきになってしまった。
「あっそ、俺もえなちゃんと一緒にいるの飽きてきたしぃ。なんて嘘…」‘パシッ’あたしの目からは涙が溢れ出てきて、奴の顔にびんたしていた。とっさにその場から走って逃げだしたあたし。
「えな!!」
奴があたしの名前を呼んだ。奴は笑って言っていたのに、冗談だって分かっていたのに、あたしの頭にはずっと忘れていた嫌な思い出が蘇る。
それはあたしが先輩に振られた日のこと。
「誰!?何で!?」
質問しまくるあたし。もう混乱していた。どうしてあたしじゃない子と手をつないでるの?
「…お前重いんだよ。飽きてきたしちょうどいいや。別れようぜ」
面倒臭そうに彼はそう言った。あたしは自分を責めた。気がつかないうちに彼の重荷になっていたんだって。‘どんッ’無我夢中になって走っているあたしは何かとぶつかってはね返った。
「いって…あれ、えな!?」
前を向くとそこにはさっきまであたしの頭の中に出てきていた人、浅沼先輩だった。
「何で泣いてんの?」
先輩の手を借りてあたしは立ち上がった。すると、
「えな!!」
後ろから奴の声がした。走って追いかけてきたらしく、だいぶ奴の息は上がっている。
「浅沼…」
「お前がえな泣かせたのかよ」
奴は黙っていた。そして、真っ直ぐあたしを見てこう言った。
「えな、俺やっぱだめだった。結局えなのこと傷つけた。ほんと最低だよな…ごめんな」
頼りない笑顔の奴。いつも強引で、無鉄砲な奴がこんな顔をするなんて初めて見た。そして1枚の紙を渡してきた。そう、先輩宛に書いた渡せなかった手紙。
「お前振られたわけ?ばかじゃねぇの、だせッ」
隣で先輩が鼻で笑って言った。
「…ばか?ばかって言っていいのはあたしだけなんだよ!!」
あたしはその紙を奴から取って破り捨てた。「は?なんなんだよ」先輩は動揺して、近くにあったごみ箱をけ飛ばして足早にこの場を去っていった。…やっぱりただの腰抜けか。ほんとは薄々勘づいてた。彼にとってあたしが遊びだということ。ただ、少しでも信じたかった。でも現実を受け止めるのが怖かっただけ。初めてほんきで好きになった人だったから。ばいばい、先輩。でもあたし分かったよ。前に進まなきゃいけないこと。そしてずっと気付かないふりしてた、あたしのほんとの気持ち。
「たくのこと気に入っちゃった」
あたしは困った顔で奴に笑いかけた。
「えなちゃんはずっと俺だけのものだから」
そう言って、奴も笑ってあたしを抱きしめた。
明日から奴と一緒に過ごす夏休みが始まる。
あ、奴が後から教えてくれたんだけど、あの日奴と一緒に教室を出てきた女の子は、まさの彼女で、まさのことで相談したくてあたしに会わせて欲しいと、奴は頼まれただけだったらしい。ま、いっか<笑>


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