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強引な恋
【青春 恋愛小説】

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強引な恋-1

あたしの名前は澤口えな。パパ、ママ、弟の四人家族。普通の高校生やってる、んじゃなくてやってた。あいつと会うまでは。
その日も帰宅部のあたしは学校が終わって、放課後友達とぶらぶらしてから帰宅。
「ただいまぁ」
「あ、おかえり。ごはんはー?」
「いいや、友達と食べてきちゃった。つーかまさの友達来てんの?うっさいけど」
「うんー」
ママは韓国ドラマを見入っていて適当に答えた。あ、まさっていうのはあたしの一個下の弟。韓流ってのに興味がないあたしは、自分の部屋に入ってCDを聞きながら雑誌を読んでいた。相変わらず弟の部屋からは笑い声が絶えない。するとしばらくしてその声がやみ、足音があたしの部屋に向かってくるのがきこえた。
‘トントン’
ノックしてすぐドアが開き弟が入ってきた。ノックするなら返事してから開けて欲しいがいつものことだ。
「ねぇちゃんさぁ、こいつに‘DEF’のCD貸してあげてくんない??」
そう言うとお友達らしき奴がひょこっと弟の後ろから顔を出してきた。‘DEF’っていうのは今あたしが聞いていたCDの歌手名。マイナーな洋楽だ。
「珍しいね、DEF知ってるなんて。別にいいよ」
そう言ってコンポからCDを出し、弟の友達に渡してあげた。
「ありがとうございます」
そう言って奴はにこっと笑った。可愛い顔をして。この時は気付かなかった。可愛い顔の裏の顔…。
次の日の朝。いつものように弟と一緒に家を出て、弟のチャリの裏に乗るあたし。なぜならあたしと弟は同じ公立の高校に通っているから。
「チャリ2ケツとかだるいしいい加減やなんだけど」
弟が明らかに不機嫌そうな声で言う。
「なんでよ。別にいいぢゃん。帰りはちゃんとバスで帰ってんだし朝ぐらい乗っけてってよ。朝のバスってだるいじゃん」
「いや前こぐ俺のがだりぃって。しかもシスコン言われるし、そのせぇで俺彼女出来ねぇんだけど」
まぁ確かに一理あるよね。彼女が出来ない理由をあたしだけのせいにされるのは勘に障るけど。
「分かったよぉ、じゃあ今日で最後ね」
けっ。使えない弟め。まさが高校入って約1ヶ月。あともう1ヶ月はもつだろうと思っていたけど甘かった。でももう時期梅雨に入るし、雨ばっかだからバスのが濡れないしいっか。一人で納得していると、まさが「おぅ」っと誰かにあいさつした。左の曲がり角から合流した彼はそう、昨日家にいたまさの友達。あたしに気づいて、
「おはようございます」
そう言って昨日見せたのと同じ笑顔であいさつしてきた。つられてあたしも笑顔で返した。
学校に着くと、
「俺部室寄ってから教室行くから」
そう言ってまさはチャリ置き場にあたしと奴を置き去りにしやがった。ここからだよ、悪夢の日々は…。
「ぢゃ、あたしもここで」
そう言って2年の下駄箱に行こうとすると、
「待てよ」
「!?」
びっくりして振り向くと、さっきまでの可愛い笑顔とは一転して、裏のありそうな笑みを浮かべる奴。ありそうなじゃないな、実際あったし。
「やっと2人っきりになれたね、えなちゃん」
「は!?」
「悪いけど俺には逆らえないよ。えなちゃんの弱みにぎってるから」
そう言って奴はあたしの手を引っ張って、自分のチャリの後ろに乗せ、走りだした。
「ねぇ意味わかんない!!ちょっと離してよ!!あんたいきなり何なの!?」
「あんたじゃないよ、たく。あんま動くと落ちるよ」そう言う奴の手はあたしの左手をがっしりつかんで離さない。確かに今動くと危ない。
何も出来ず連れてかれた先は、ファミレス。窓際の席に案内されたあたし達。つっても奴に手をつかまれてて誘導されてるあたし。席について奴はやっと手を離し、メニューを見出した。
「えなちゃん何食う?俺今日朝飯食ってないんだよねー」
なんてノンキなんだ、こいつは。あたしを誘拐しといて何食う??って…呆れたのもつかの間、一気に怒りが込み上げてきたあたし。
「あんた正気!?まじ意味わかんない!!」
「あんたじゃないって、たくだってば。で、何食うの?」
「…」
マイペースって凄い。って感心してる場合じゃないって。
「帰る!!」
そう言ってあたしは立ち上がった。
「いいのかなぁ」
と、奴は1枚の紙をちらつかせてきた。その瞬間青ざめるあたし。そう、その手紙こそまさしくあたしの弱みだった。


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