「レイプ3態」-5
レイプ3態 夜の公園で
その晩、並木雪子はパートタイムの遅番に、残業が重なって、いつもより帰りが遅くなっていた。
自宅への帰りを急いでいた雪子は、それまで歩いてきた国道を外れて、市立の公園に足を踏み入れていた。
普段、夜の公園などには、ぜったいに足を踏み入れることはないのだが、
家までだいぶ近道になることと、後ろからついてくる人影のないこともあって、つい踏み入れてしまっていたのだ。
その公園は雪子たちが住んでいるO市内では、一番広い公園で植栽された樹木も多く、女性が夜間、それもこんな遅い時間に歩くのははばかられる公園であった。
33歳の人妻が、それを知らないわけがない。
つい、心の隙に魔が差したということだろうか。
雪子は目を見張るほどの美人ではないが、
愛嬌のある顔立ちは男好きのするタイプであった。
豊満な胸の膨らみと、
ムッチリとした臀、
それにつづく長い美脚のプロポーションは、
男心をそそらずにはおかなかった。
その雪子が公園の中ほどまて達したときのことだ。
行く手に置かれたベンチから黒い人影が、
のっそりと立ち上がるのが見えた。
心臓がドキンと波打ち、
全身に鳥肌が立って、
慄然(りつぜん)たる思いに、
身がブルッと震えた。
雪子は直進するのをやめて、
右に進路を変えた。
すると、
行く手の人影も右手に歩を進めながら、
ふたりの距離を詰めてくる。
それで彼女は自分が狙われていることを、
はっきりと悟った。
物盗りなのか、
レイプ魔なのか、
彼女は公園の近道を悔いたが、
もはや遅きに失したようだった。
ふたりの距離が詰まっていき、どちらからともなく歩をとめて、向かい合って対峙(たいじ)した。
外灯の仄かな明かりに浮かぶ人影は、
中年の男。
その風体からホームレスのようだ。
こんな住宅街の公園にも、
ホームレスが棲(す)みつくようになっていたとは、
迂闊(うかつ)にも知らなかった。
男はもう長いこと風呂に入っていないようで、パサパサになった蓬髪(ほうはつ)が、縺れ合い絡み合って筋のようになっている。
顔面は不精髭と垢で覆われ、目だけがギラギラと獣性を帯びた欲望の色に
光っている。
身にまとっている着衣のどれもが、擦り切れ垢染みてくたびれ果てている。
咄嗟に、雪子はバッグから財布を取り出すと、そこに入っていた7000円か、8000円分の札を引き抜いて、彼の前に差し出した。
「いま私が持っている全額です。これで……これでかんにんして、ここを通してください」
「おう」
男が腕を伸ばして、差し出した札をもぎ取った。