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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第十話-2

「こんにちは。坂本です。どなたかいらっしゃいますか。」

少し声を張ってみる。
店内はしんと静まり返ったままだ。
もしかしたら出かけているのかも。
アポなして来るなんて、やっぱり思い切りすぎたかもしれない。
また出直そうと思い、引き戸に手をかけようとした時、
二階からガタガタという音が聞こえた。

「こんにちわー。いらっしゃいませ。お待たせしましてすみません。
ってりょーこさんじゃないですか。どうしたんすか。」

彼はぺこっと頭を下げながら襖を開けて出てきた。
頭を下げていたので最初、私だという事に気づかなかったらしく、
ワタシを見るなり、目を見開いてぱちぱちと瞬きをした。

「あ、こんにちは。この前はありがとうございました。これ、やっぱり返そうかと思って…。」

そう言うと私は手ぬぐいを差し出した。
彼は目を丸くして手ぬぐいを見つめている。
しばらくすると目を半分くらいまで細めてにっと笑った。

「これはりょーこさんにあげるって言ったじゃないですか。わざわざ届けにきてくれたんすか?」

「はい。何だか素敵な手ぬぐいだし、悪いかなって思って。」

「へぇ。そんな良いすよ。手ぬぐいはたくさんありますから。あ、ちょうどお茶にしようと思ってたんすけど、りょーこさんもどうすか?」

「え?あ、良いんですか。休憩中にお邪魔してしまってすみません…。」

「いや、常に休憩中みたいなもんすから。今お茶入れるんで、二階へどうぞ。」

「じゃあ、お邪魔します…。」

彼はにっと笑って階段をひょいひょいと駆け上がっていく。
その後を私はゆっくりついて階段を上がって行った。


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