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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第十一話-1

十一話;追想―其のニ―


今日の彼の着物は焦げ茶色。
黒い帯には桜の刺繍がされている。
さり気無いお洒落が素敵だと思った。
あまり着物など着ないけど、こうやって季節を取り入れる事によって
お洒落を楽しむ事が出来るんだな、と感心してしまう。

「どうぞ、散らかってますけど、お座りください。」

「…失礼します。」

以前取材に来た時と変わらず、
掛け時計のカチコチという音だけが部屋に響いている。
この前来た時は急ぎ足であまり部屋全体を見渡してはいなかったが、
本当に今風の物は一切と言っていい程置いていない。
コンビニが色鮮やかと言っていたのが何となくわかる気がした。

「お待たせしました。どーぞ。」

「ありがとうございます。」

目の前にお茶とお菓子を出された。
そのお菓子を見て少し驚いた。
和菓子が出てくると思っていたが、シュークリームが出てきた。
しかも私が間違ってなければ、最近流行っている洋菓子店のシュークリームだ。

「あの、もしかして、このシュークリームって、シュクレドールのじゃないですか?」

「へ?あ、そんな名前だったかもしれません。美崎さんから頂いたんすよ。」

「え?サヤカから?」

「へぇ、この前の取材のお礼とか言って昨日お店に持ってきてくれました。」

昨日をいうことは仕事が終わった後、ここに来たという事だ。
今週は忙しかったのに、どうやってこの人気店のシュークリームをサヤカが手に入れたかが気になった。
そして、そのシュークリームを差し入れるなんて、サヤカは藤本さんの事が本気で気になっているのではないかという考えが浮かんだ。

人気のシュークリームとコンビニのプリン―。

到底勝ち目はないし、出すのも恥ずかしい。
本当に私は何もわかっていないと思い、苦笑いをしてしまう。

「りょーこさん、お嫌いですか?りょーこさんには和菓子よりこっちの方が良いかと思ったんすけど。」

「あ、はい。美味しいです。とっても。ここのシュークリーム、すごい人気でいつ行っても
売り切れなんですよ。」

「へぇぇ。そうなんすか。あんまり洋菓子は食べないんでよくわかんないすけど、
気にって頂けたなら良かったす。ってワタシが買ったんじゃないすけど。」

彼はにっと笑ってシュークリームを頬張る。
サヤカとも一緒にお茶でもしたのだろうか。
胸のあたりが少しズキズキしてきた。

「お茶に付き合わせてしまってすんません。お出かけの途中で来られたんすか?」

「いえ、今日は特に予定もなかったので。」

「そうなんすか。買い物袋持ってたんで、何処か行ってたのかと。」

買い物袋と言われてはっとした。
コンビニの袋をバッグに入れないで、出しっぱなしで歩いてきてしまったのだ。


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