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コンビニ草紙
【理想の恋愛 恋愛小説】

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コンビニ草紙 第十話-1

第十話 追想
起きると午前11時を回っていた。
飲みすぎで頭が痛い。完全な二日酔い。
 
昨日、彼に会ったのは夢だったのではと思ったが、
しっかり手ぬぐいが干してあるのを見て現実だったのだと再確認する。
入念に洗ったので、汚れも綺麗におちた。
よく見ると薄く桜の模様が幾つも入っている。

手ぬぐいってお洒落なんだなぁ。

なんて考えながらその花びらの一つ一つに見入ってしまう。
何だか素敵な柄だし、やっぱり返した方が良いと思う。

今日はお休みだし、これから会いに行こうか。
でも昨日の今日で(正確には今日の今日)で会うのも良くないかな。

二日酔いの頭で考えるとこめかみのあたりがズキズキした。
さすがに昨日の今日で押しかけるのは悪い気がしたので、
会社の帰りにでも藤本書店に寄ろうと決めた。
決めたは良いものの、次の週は想像以上に忙しく、
帰りに寄れる程の余裕はなかった。

あの日からあっという間に1週間がすぎてしまった。
とても時間が経った様な気がしたが、1週間しか経っていない。
さっきコンビニに行ってみたが、彼の姿はどこにもなかった。
全てが夢のように感じて不安になる。

明日、藤本書店に行ってみよう。

突然行ったら迷惑だろうか。
でも手ぬぐいを返すだけだし、わざわざお店に電話を入れるのも変だな。

考えすぎは私らしくない。
とりあえず明日は出かけてみよう。
そう決めて早めに寝ることにした。


次の日、起きると10時を少し過ぎていた。
休みの日はどうしても気が緩んで遅い時間に起きてしまう。
お昼までには出ようと思い、軽く化粧をして、洋服に着替える。

私はスカートをスーツ以外持っていない。
自分には似合わない気がして、私服は大体パンツスタイルだ。
女っ気がない格好の自分につくづく溜息が出るが、仕方がない。
マンションを出ると、癖でコンビニに目がいく。

そういえば、コンビニの商品とか、藤本さん食べた事あるのかな―。

ふとそんな考えがよぎる。
この前のお礼に何か甘いものでも買っていこう。
コンビニのスイーツを買って行ったら案外面白いかもしれないと思い、
新商品のプリンを手に取る。
プリンの入ったコンビニ袋とバッグを手に、電車に乗る。


藤本書店の前に着くと、妙に緊張した。
仕事で行った時の方がすんなり入れた気がする。
扉の前で軽く深呼吸をして引き戸を引いた。
チリンとドアベルが鳴る。
中にはお客さんはいないようだ。
彼の姿も見えない。


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