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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯2/近くて遠くて-4

「その事は謝ろう…練習中に手足の複雑骨折とは私としたことが…」
(どんな練習してんですかアンタら…)
そんなやり取りを個人的なツッコミを入れながら聞いていると、剣道着姿の二人は木刀を構えて向かい合っていた…
(まさか…アイツら…)
「ちょちょっと待て!」
「なんだアカネ?」アキラは集中力を削がれたためかムスッと答えた
「なんですか貴方は…真剣な死合いの最中に…」これまた右に…いや前に同じ…
「まさか…木刀で試合すんの?防具を着けないで?」
「ああ無論だ」「当然です」
「何考えてんだよ!危ないだろうが…打たれれば、ただのケガじゃ済まないだろ?」
「そうだな…」「それが?」
「ん〜…その、二人共女の子なんだから…傷とかがその〜え〜とぉ…」
二人から発せられる殺気に殺気…
(ここは黙って見守るが吉!何かありそうだったら死んでも止めに入るか…文字通り死にそうだけど…)
「心配は無用だアカネ…」
心なしか温かい声色でそう言うと、アキラは再び黙り込んだ…
(あぁ、頑張れアキラ)
木刀を構え向かい合う二人…
真剣勝負を仕合う者を、雷の中で喰らい合う獣…とか表現した人がいたけど、まさにそんな感じだ…まだ二人とも一歩も動いてないが、そこからは凄まじい殺気やら闘気やらがビシビシと伝わってくる…
僕が気をそらしているその刹那の間に試合は…命のやり取りは始まっていた…
凄まじい速さで木刀を振るう二人…
(正直見えねぇ…)
その全てが瀕死の一打であろうが、二人はその一打一迅をすんでのところで避けている…
(すげぇ集中的だな…)
二人の動作は何か…こういう場には不釣り合いな表現かもしれないが…とても優雅でしなやかでキレイで…舞を舞っているようでもあり…
僕は彼女らの木刀が奏でる打撃音でさえも何か神聖なものであるかのように感じていた…
(現実なんだよなこれって)
打ち合う二人…
アキラが交わして突きを放つ…
打ち落とし面を放つ剣持さん…
そして、それを返し胴を打つアキラ…
そして…また…
(上手いとかいうレベルじゃないよなぁ…打ち落とし面に返し胴…フェイクに次ぐフェイク…普通なら精神的な疲労でまいるだろうに…)
どれほどそんなやり取りが続いたんだろうか…
二人とも動きに鈍りは出ていないが…
(あの子…技が何か大振りになったような…)
最初に感じた二人の違い…静かに構えるアキラと、重々しい闘気を放ち構える剣持さん…
(一打一打の凄まじさは剣持さんか…だけど、アキラはそれをいなして返し技に徹底している…)
そう、この試合…アキラから打って出たことは一度もない…剣持さんの放つ技を流して返す…いなして打ち込む…アキラはそれだけに徹していた…
剣持さんが抱え面を放つ…そこで始めてアキラがしかけた…
アキラは軽い動作でそれをいなすと木刀をスゥッと下げ気味に構えた…それは俺でも分かるようなフェイクだったが…
満身創痍となった剣持さんは必殺の一打を放った…
アキラの頭上目掛けて振り下ろされる必殺の一撃…
アキラは深く足を溜めると、木刀を地面スレスレまで振りかぶり、踏み込んだ…
アキラが今日始めて見せる渾身の一撃…
アキラの放った一撃は…剣持さんの胴に深く深く打ち込まれて…
『ドッゴォォ〜ン』
そんな効果音が相応しいだろうか?
剣持さんの体は宙を舞い…道場に叩きつけられた…

「ふぅ…腕を上げたな剣持」
「竜童児もな…まったく憎らしい」
二人は向かい合いシェイクハンド…
凄まじい試合の後なのに何か清々しい…
(つうか…平気なんだ剣持さん…)
「どうだったアカネ?」
そんな二人の様子を微笑ましく眺めていると、アキラが声をかけてきた…
「う〜んとだな…うん、二人とも凄かったよ!」
「それだけか?」
「うん…いや、まぁ」
「そなたも剣道を学んでいたならば何かあるだろう?」
「俺なんかが言うの?」
「ああ」
「何言っても怒らない?」
「無論だ」「まぁ発言によりますが」
「まずは…剣持さんは…何か力みすぎなんだよな…一撃一撃に力を込めすぎなんじゃないか?剣持さんほどの腕ならば、短時間で試合を終えるんだろうけど、相手が相手ならば疲労の蓄積、体力の消耗が激しいと思うし…」
ここで一応二人の顔色を伺った…僕としたことが大それた事を口走ったものである…
「続きは?」「続けてください」
うぅ…僕は内心ビビりながらも続けることにした…
情けね〜奴!なんて言わないでくれ…相手が相手なんだから…コイツらなんだから…怒りを買えば…それこそ生死に関わるわけで…
「アキラは…その何だ…特には…あっ!そうそう…右足の返しが深すぎないか?返す時に間合いが空きすぎる…相手に読まれたら結構厄介だと…」
二人は真剣な…いや恐い面もち…
(謝るべきか?謝るべきだろう??うん謝ろう!謝れよ俺!!生意気言ってすいませんした!!!)
イメトレを終え、さぁやるぞって時だった…
「うん…良く見てるじゃないか…正直驚いた」「えぇまったく同意です」
「へ?」
「利き足の返しが深いのは昔からの癖なんだ…マシになってきていたとは思っていたんだが…」
「私も…どうも昔から力むクセが抜けなくて…」
なぁんか二人ともウンウン頷いてる?逃げなくていいんですよね?(やるじゃん俺!)
それから二人は満足げな表情て更衣室に消えていった…
僕はフゥ〜と安堵した…
(なぁんか試合後のほうが疲れましたよ…ホントに)
二人して更衣室に入ってしまい、どうなんの?とちょっと心配したが…更衣室からは楽しげな会話が聞こえてきたので、とりあえず安心した…
(二人とも憎々しい感じもないし、いがみ合ってる感じもない…)
ライバルと書いて親友と読む…そんな関係か?これぞ武道家?
(うん、武道ってホントにいいものですねぇ〜)


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