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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-19

第7話 『二番目という存在』


 俺は中学高校の五年間でたった一度だけ先発投手として
マウンドに上がったことがある。

 春の選抜がかかった昨年の秋季大会、弱小校として全く
のノーマークだったうちの高校は下馬評を覆して県予選の
準々決勝まで勝ち進んだ。
 原動力はもちろんエースの大橋大介である。
 あまり部活動に熱心ではない部員が多く、正直力不足の
打撃陣を抱えながら一つ二つと勝利を重ねていった。

 しかし大介の疲労は一戦一戦重ねるうちに目にみえて大
きくなっていった。
 打撃陣が頼りなくコールドに持ち込めないのは当然とし
ても、余裕のある点差にすることすらできなかった。
 その間、俺は点差次第で大介を休ませるためのリリーフ
として待機していたが一度も出番はやってこなかった。
 そして準々決勝まできて、大介は疲労のピークと判断し
た部長が俺を先発に立てたのである。

 結果は……散々なものだった。
 俺は序盤三回までで大量失点してしまい、四回からは結
局大介を登板させてしまった。
 大介は四回以降をなんとか無失点で乗り切ったがうちの
打線に俺が与えた失点を跳ね返す力は無く、我が校の快進
撃はそこで幕を下ろした。
 もともと甲子園なんて夢の世界だったうちの野球部のこ
とだから俺のふがいなさを責める者はいなかったが、俺に
は大介に追い付くために費やした日々の虚しさだけが残さ
れた悪夢のような試合になった。

 それから今年の春先まで練習に参加してはいたけれど、
どうしようもない空しさを拭い去ることができないままだ
んだん部室に近寄ることすら無くなっていった。

 ……………

「斉木先輩、練習に行きますよ〜」
 その日の放課後も千佳はわざわざ教室まで迎えに来た。
「おお、中原。今日も圭一は逃げずに待ってるぞ」
 そう言いながら大介が俺の肩を力強く叩く。
「いてえよ、馬鹿力で人のことばんばん叩きやがって!」
 大介はしかし、すぐさま反抗してきた俺に満足気な顔を
向ける。
「圭一、俺に叩かれてもよろけなくなったな。実に頼もし
い足腰の成長ぶりだ!」
「へえへえ、喜んで頂けてなによりだよっ!」
 千佳が呆れたような目で俺たちを見ながら口を挟む。
「……大橋先輩もさっさと練習行きますよ」
「おお、そうだな。練習に費やす一分一秒が甲子園への道
を切り開くのだからな。無駄にはできん」
「そうですよ。さあ二人とも早くグラウンドに行ってくだ
さい」
「よおし、せっかくだ。グラウンドまで走るぞ、圭一!」
「この間もそんなこと言って、廊下走って先生に説教され
たの忘れたのか?」
「……そうだな。あれはかなりのロスタイムだった……よ
し、普通に歩いていこう」
 ……大物っていうのはこういう性格をしているものなの
かな? と俺は思った。

 美奈子が夜中に忍んでくることがなくなってから数日、
俺は毎日放課後だけではなく朝練にも顔を出していた。
 甲子園への情熱が成せる技などという大介好みの理由で
はなく、とにかく体を動かしていたかったのだ。

「斉木先輩、ここのところ本当に真面目に練習に参加して
ますね〜」
 校舎を出て野球部の部室へと向かう途中、千佳がそんな
ことを言い出した。
「……まあな」
「大橋先輩も大喜びですよ。ねえ?」
 千佳が大介に相槌を求める。俺は少し気分が重くなる。
「ああ、大喜びだとも! わっははは!」
「……光栄だよ、喜んでもらえて」
 あまりにそっけなく言ってしまったせいか、千佳が不思
議そうに俺の顔を覗き込む。
 俺は千佳の視線に気づいて目をそらす。

 ……千佳は大介を追ってこの高校に入学した……
 俺はずっと前に聞いた噂話を鮮明に思い出していた。


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