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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-18

それは大介だった。
 大介は教壇に立つ俺を見ると、不思議そうな顔をする。
「あれ、圭一? ……お前まだ帰ってなかったのか?」
「あ、ああ、まあな」
「でも美奈子が一緒に帰ろうとか言って来てただろ?」
 教壇の机の下で美奈子がビクッとする。
「み、美奈子には先に帰ってもらった。それより練習はも
ういいのか?」
「ああ、今日は来ているやつも少なかったし、本当に軽く
やっただけで終わりにしたよ。それで、たまには家で勉強
してみようかと思ったんだが……教科書とかノートとかい
ろいろ教室に忘れていたもんで戻ってきたわけだ」
「忘れてっていうより普段持って帰ってないんだろ?」
 大介なら野球で進路を切り開けるしな、と俺は思った。
「わははは、まあな……で、お前は何してるんだ?」
「お、俺は、あんまり疲れてるもんだからもう少し休んで
から帰ろうかと思ってさ」
「もう疲れは取れたのか? 教壇に立ってたって疲れは回
復しないだろ?」
「いや、一人きりの教室も暇だったから、先生の側から見
た教室の風景を見てみたかっただけだよ」
「そうか……」
 そこまで言ったところで急に大介の表情が変わる。
 この男には珍しく、何か思い詰めたような顔だ。
「……美奈子を……一人で帰してよかったのか?」
「は? だ、大丈夫だろ。今だってまだそんなに暗くなっ
てないぜ」
 再び話題が美奈子に戻って、俺と机の下に隠れている美
奈子の心臓が大きく跳ねる。
「いや、そういうことじゃなくってよ……」
「ど、どういうことなんだ?」
「お前と美奈子ってつきあってるんじゃないのか?」
「は?」
「……ち、違うのか?」
「……あ、ああ」
 たぶん嘘は言っていない。俺と美奈子はお互い好きだと
かそんなことを言ったり言われたりなんかしていない。
 エッチはたくさんしたけど恋愛感情があるかというとか
なり疑問がある。
「で、でもお前たち仲いいだろう?」
「それはお前だって……」
 そこまできて俺は大介の気持ちにようやく気がついた。
「……お前、美奈子のことが好きなのか?」
 大介の顔がみるみる赤くなる。長いつきあいになるけど
大介のこんな顔は初めて見た。
 俺の言葉は同時に机の下の美奈子も動揺させていた。
「そ、それは……」
「図星か?」
 大介の顔がますます赤くなる。
「お、俺は……」
「……俺は?」
「帰る! あ、明日も朝早いしな!」
 そう最後に大声で言うと、大介は取りにきたはずの忘れ
物を置いてさっさと帰ってしまった。

 大介の廊下を走り去る足音が消えると、机の下から美奈
子が這い出てきた。
「ふぅ〜、やばかったな……」
 俺は大きく息を吐いた。
 すっくと立ち上がった美奈子はうつろな状態で一言も喋
らない。
「……美奈子?」
 俺が名前を呼ぶと初めて美奈子が反応を示す。
「あ? ごめん! ……なに?」
「……」
「……圭ちゃん? ……どうしたの?」
「……お前、大介のこと、どう思う?」
「どう、って……」
 美奈子の顔が薄暗い教室の中でもわかるくらいに赤い。
「……」

 俺は美奈子の様子から、なんとなくわかった気がしてい
た。美奈子もその時初めて気づいたのかもしれない。
 『美奈子は俺よりも大介の方が好きだ』
 
 その日は美奈子とは結局なにもせずにそのまま帰った。

 夜中に美奈子が忍んでくることもとうとう無かった。


 第6話 おわり


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