黒魔術師の恋愛事情〜因縁-3
「皆仲良かったっけ。俺も光輝も優子も…智博さんも」
「俺は智博って奴は知らないよ。優子ちゃんとは仲良かったけど」
「そっか…。実はさ、優子は智博さんのことが好きだったんだ。俺によく相談してきたよ」
「それで?」
「相談に乗ったさ。そりゃあ心苦しかったけど…智博さんいい人だったから、しょうがないかなぁって」
「…そういや優子ちゃんが年上の彼氏が出来たって言ってすぐだっけ?突然意識不明の昏睡状態でそのまんま逝っちまったのは」
「…儀式なんだよ。人の魂を生贄に捧げ、黒い力を得るって儀式。あいつは優子の魂を生贄にしたんだよ。そりゃあ死因が原因不明になるわけさ。魂が抜けただけだもん。」
「それで黒魔術師になったんだな…」
「俺はあいつに復讐を誓った。どんな手を使ってでも殺してやろうと思ったさ」
「自分死にかけだったじゃん!!」
「しゃーねーだろ!あいつより強くなれる方法、あれしかなかったんだもん!」
「けど、普通自分の魂を生贄に捧げるか?!あの時、俺と小春ちゃんがお前の部屋に入んなかったらどうなってたと思ってんだ?」
「さぁ?でもあれには感謝したよ。もう迷惑掛けられないって思ったし」
「今でも感謝し続けろよ。けど、それから黒魔術にハマっていったんだねぇ…そいつが姿を眩ませた後でも」
「まぁな。でもそれが今役に立つとは…自分でも驚きだ」
「何を言うか…殺すのか?」
「つまらん。もっといい方法がある。と思う。」
「適当?!そんなんでいいのか?」
「多分な……」
真彦は大きく背伸びをする。
「まぁお前や小春が助けてくれた命だ。大切に使うさ」
「絶対負けんなよ」
「もちろん!実はこっちに分があるのだ!」
「まぁ危ない橋渡ってきてるからなぁ」
「というか、むこうが俺が黒魔術師だって事を知らないから。ビバ不意打ち!」
「…それサイコー」
真剣な話だったのに、思わず光輝も笑ってしまう。
「パンピーだと思ったら黒魔術ってか?いいねぇそれ」
「だろ?」
その時、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。
「おし、今日中に準備を整えて、明日には対戦できるようにしとこっと」
「頑張れよ、真彦」
「おぅ!」
真彦は親指を立てて返事をしたのだった。
そしてさらに翌日。
「おかしいなぁ…」
真彦は悩んでいた。いつもならすぐ来るはずの麻里が来ないのだ。遅くなるにしろメールが送られてくるはずである。
「おい、真彦。やっぱり変だぜ?高坂さん、もう帰ったって」
「え?そんな…」
光輝のその報告に、真彦はさらに悩んでしまう。
「メールでもしてみれば?」
「したけど返ってこねぇんだよ…」
そんな事を言っていた時だ。真彦の携帯が震えた。
「メールだ…噂をすればなんとやら、麻里からだ」
「普通噂をしたら本人が来るもんだよな?」
「気にするな…えっと、『今桂木さんという人と一緒ににいます。水田工場跡地に一人で来てとのことです。待ってます』…って…はぁぁっ?!」
真彦は大声を出してしまい、光輝はそのことに驚いていた。
「んだよ、急に…水田工場ったらこっから近いだろ?」
「そんなんじゃねーんだよ…光輝、頼みがある」
真彦の声ははいつに無く焦っている。
「俺の家に行って取って来てほしいものがあるんだ。急いでな。俺は工場跡に直接向かう」
「別にいいけど…そんな焦ることなのか?」
「焦るも何も…桂木ってのは、智博さんの苗字なんだよ!」