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黒魔術師の恋愛事情
【青春 恋愛小説】

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黒魔術師の恋愛事情〜因縁-2

「ただいま…」
「あ、お兄ちゃん。おかえり」
 真彦を出迎えたのは妹の小春である。
「なんだ、もう帰ってたのか。母さんは?」
「何言ってるの。お父さんとお母さん、二人で旅行に行ったじゃない。それにもう七時よ?」
「そういやそうか」
 黒須家は高二の真彦と中三の小春、そして両親の四人家族である。現在真彦の両親は結婚記念日の前後を夫婦水入らずで過ごすべく旅行中だ。つまり、家には真彦と小春しかいない。
「あ、そういや…」
「お兄ちゃん、お風呂もそろそろ沸くんだけど、ご飯にする?お風呂にする?それとも…」
「小春…」
 何気なく言った真彦も、冗談混じりで言った小春も、一瞬流れが止まる。
「…お兄ちゃん……」
「安心しろ。俺にはシスコンの趣味は無い。それより…智博さんが現れた」
「…嘘」
 小春の顔が一瞬青ざめる。
「本当だ。明日にでも光輝にも伝えるつもりだけど…お前も気をつけてくれよ?」
「…分かった。お兄ちゃんをあんな変な趣味に走らせた人だもんね」
「変な趣味ってお前なぁ…」
 小春も真彦の黒魔術については知っている。ちなみに両親達は何故か知らない。
「でも…お兄ちゃんは死にそうになった。そうでしょ?」
「あれは自分自身の責任だ…お前にも迷惑かけたな」
「いいのよ。でも、次は無理よ?私魂弱いみたいだから、今度はどうなるか判らないから」
「当たり前だ。もう誰も巻き込まないから。安心しろ」
 五年前、真彦は小春と…光輝に命を救われている。結果小春が極度に弱々しくなってしまったが、今ではある程度回復してきていた。
「そうだ!今度ケーキ買ってこなきゃ!小春、何ケーキが食べたい?」
「え?じゃあ…ショートケーキかな?」
 そんな兄妹の会話が、二人しかいない黒須家の中を明るくしていくのだった。

 翌日の昼休み、旧体育倉庫前。
「…マジでか?」
 真彦が昨日の出来事を話した時の光輝の反応だ。
「嫌なんだがマジだ」
「…次は誰が狙われるんだ?俺か?小春ちゃんか?」
「…であってほしいよ。俺や智博さんのこと知ってる二人なら、まだ警戒してくれるだろ?」
「確かにそうだけど…」
 光輝が心配そうな声を出す。いつもの光輝らしからぬ声だ。
「智博って人はお前と『同業者』なんだろ?」
「あぁ…。なぁ、優子のこと、覚えてるか?」
「当たり前だろ?お前の初恋の人で…死んだ人」
「表向きにはな。実際は…殺されたんだ」
「…だったな」
 二人は当時を振り返る。



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