コンビニ草紙 第九話-2
「…着いたすね。」
「あ、ありがとうございます。手ぬぐい、返しますから。」
「いいすよ。あげます。」
そう言うと、またにーっと笑い、手をひらひらとさせた。
「送っていただいてありがとうございました。…おやすみなさい。」
「どういたしまして。それじゃあ、おやすみなさい。」
こんなとき、「お礼にお茶でもしていきませんか?」とか言えたら何か進展するのかもしれない。
でも私にはそうゆう可愛く甘えるような事が出来ない。
ふらふらと歩いていく彼の後ろ姿を見送りながらそんな事を考えていた。
部屋に帰ってすぐ着替えてメイクを落とす。
時計を見ると午前三時を回っていた。
手ぬぐいからお香の匂いがする。
くれると言っていたが、なんだか悪い気がして、
お湯に浸して着いてしまった血を丁寧に洗った。
その後、洗濯機に入れてボタンを押す。
手ぬぐいはやっぱり返そう。
本当は返すのを口実にまた彼に会いたかった。
もっと自分に正直に生きれたら良いのに―。
洗濯機の中をくるくると回る手ぬぐいを見つめながらそんな事を考えていた。