ふつう-第八話-1
公園から徒歩で15分。
鷹丸くんの家、着いた…。
ほんとにうちから近いんだな。
所謂一戸建てなんだけど…新しいしお洒落。
「どうぞ」
「あ…お邪魔しまーす…」
「別に誰もいねーから気にしないでよ」
「あ…はい…」
外からじゃ分かんなかったけど、広い。
玄関は吹き抜けで、広々としている。
「で、ここが俺の部屋っす」
「おわっ…すごっ…」
結構広い部屋の中には、デカイ机やベッドやテレビやDVDプレーヤー、パソコン、DJ用の何かとか(ターンテーブルだっけ?)スピーカーとか、大量のCD、レコード、そして服作り用のミシンが二つ、大量の雑誌、あと体の部分だけのマネキンみたいなのが。
壁には色んなアーティストのポスターやショップのフライヤー、白黒の写真、あと例のパターンってやつが所狭しと並んでいる。
だけど物の多さのわりに綺麗に整頓されてる。
で、少し甘い、お香の匂い。
灰皿があるあたり部屋でもタバコ吸ってるんだろうけど、タバコ臭さは無い。
「ま、適当に荷物置いて座っちゃって」
「あ、うん。しかし…なんか…すごいね」
「なにが?」
「や、なんか…よく分かんないけどあのDJの何かとか、マネキンとか、ゴツいミシンとかなんとか…」
「あぁ、DJの機材のあのデカイ方はレコード用のターンテーブルで小さい方はCD用、所謂CDJってやつで、あとはミキサーってやつ。あのマネキンはボディ、ゴツい方のミシンはロックミシンっての」
「へー…。あとCDとかレコードとか雑誌の量、すごいね」
「結構中古だけどね。さすがに新譜ばっかりじゃ金が持たないから」
そう言って鷹丸くんは“CDJ”と“ミキサー”というものを何やらいじくり始めた。
途端に、少しずつ、ごく自然と音量が上がって来た。
ラップしてるし、ヒップホップってやつなのかな。
でも何かが違う…。
鼻歌みたいな歌を歌ってる…。