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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Like to love-4

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ピンポーン。
ガチャッ。
「はい」
再び鳴り響いたチャイム音。
玄関を開ければ、後から来ると言っていた2人の女性。
「やっほ。なんか結構元気じゃん?これ、お見舞い」
小百合が白いビニール袋を差し出した。
色とりどりのお菓子のパッケージが透けて、シンプルな袋を彩り鮮やかにしている。
「あぁ、ありがと…」
それをひょいと受け取れば、小百合は何やら怪訝そうな瞳を向けてきた。
「…賢ちゃん、何か怒ってる?」
「別に…、あぁ、そういえば今臨時収入が入った所だ」
「…?へぇ…」
あいつ。あの野郎。
やっぱり盛大に且つ豪快に大笑いしやがった。
わかっていた。そんな事はわかっていたのだが、いざ目の前でそれを目の当たりにしてしまうと、やはり腹を立てずにはいられない。
「とりあえず玄関じゃあれだし、上がって」
「オッケー。おじゃまー」
晃司と同じ靴の脱ぎ捨て方をして、小百合が中へと入る。
そんな所まで似ているなんて、もはやこいつらは運命に違いない。
「あ…」
玄関に向き返れば、まだそこで立ったままの志穂。
いつものショルダーバッグを肩に掛け、手は両脇でグーに握られている。
「…昨日はごめんね。倒れちゃう前に、私が気付いてあげられれば良かったね」
合わせていた瞳を俯かせ、握り締めた手を更に力強く締め付けた。
あの返信メールは、結局送れないまま俺の携帯の中。
直ぐにでも返信していれば良かったと後悔した。
志穂は多分、今日一日俺へのいわれのない罪悪感に苛まれていた事だろう。自分は何もしてあげられなかったと。
志穂は何も悪くない。悪いのは全部俺なのに。
「ホント…ごめんね…」
「志穂は悪くない!むしろ謝るのは俺の方だ。無駄に心配かけて…ごめん…」
玄関に立つ志穂へ向け、俺は深々と頭を下げた。
何も悪くない、況してや好きな子にこんな顔をさせた挙げ句、こんなに謝らせたりして…。
俺という奴は、何て最低な男なんだ。
「…?」
ふと、下げた頭に違和感を感じた。何かが乗っているような違和感。
それが手だという事に気付くのに時間は掛からなかった。
俺の頭に乗せられた掌が、そのまま左右に行き来する。
徐々に温もりが頭部に広がり、心地よさが心の中に広がった。
優しく撫でられながら、ゆっくりと頭を上げる。
志穂の眼球には薄らと膜が張られてキラキラと輝き、口角は少しだけ上がり力なく笑っていた。
あぁ。俺って奴は本当に。
心配そうな志穂の顔。
すごく愛しい。
笑顔だけではなく、全てを守ってやりたい。
志穂の全てを守ってやりたい。
一時期流行ったラブソングではないが、守りたい女だと初めて思った。
無意識に、俺の右手が志穂の頭へと伸びる。
猫毛とまではいかないが、触れた髪の毛は指通りも良くサラサラと気持ちがいい。
そのまま手を落として志穂の頬に触れる。
左の頬に皰があると言っていた。それを確かめるように触れば、俺の意図をわかってか否か、何をしてるの、とでも言いたげにくすりと笑った。
柔らかい時間が流れる。
俺と志穂の周りだけ、別の世界にいるような感じがした。


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