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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Daily life-1

彼女、西山志穂との出会いから一週間が過ぎた。
あの後、番号を交換し終えてから、何だかんだで2時間以上もそこに居座ってしまっていた。
どちらも帰るタイミングがわからなかったというのもあるのだが、話をしてみると、俺と志穂は結構趣味が合う事に気が付いたのだ。
その発端は、知ったばかりの志穂のアドレス。
登録する時に何気なく見れば、そこには『rock』の文字。
何を隠そう俺は音楽大好きで、その中でもロックやパンクは並々ならぬ熱を注いでいた。毎年夏フェスはあらゆる所に行っているし、勿論今年も盛り上がるつもりでいる。
そんな訳で、その単語に興味を持った俺が「ロック好きなの?」と話しだしたのが事の始まり。
やはり志穂もそういった音楽ジャンルが好きだったらしく、某富士祭りや音の夏、その他のフェス話で話は大層弾みに弾んだ。
話題は二転三転し、音楽からサークル、サークルから飲み会、飲み会から門限の話題へ変化し、門限から帰宅へと事が運んだ。
それから今日で一週間。あっという間に7日も過ぎてしまったように思う。
この一週間で、沢山の事をメールで話した。メールを送るのは専ら俺だが、メールの最後は決まって志穂の方。俺の方が先に眠くなるっていう問題もあるのだと思うが。
「ふーん、それで?」
大学内の食堂。
昼前という事で食券券売機の前には長蛇の列が出来ている。
俺と晃司はセルフの冷たい水だけ持ち、テーブルに座って先日の事を話していた。
「…あ?」
「それで、どうしたんだよ?」
始終を話し終えると、隣から単調な声が発せられた。
どうしたも何も、全て話し終えているではないか。
まさか聞いていなかった…なんて事はないと思うが、これ以上何を話せばいいのだろうか。
「どうしたんだよって、何だよ」
「はぁ?まさかそれで終わりな訳?」
あっちゃーと晃司は自分の額を右手で覆う。
前から思っていたが、こいつのジェスチャーはいちいち大振りで、ちょっとした事でこう、怒りの沸点が上がってしまう。
「終わりな訳?って、そりゃ終わりだろ?」
「おン前…、この馬鹿ちんがー!」
言葉と共にいきなり俺に振り落とされた脳天チョップ。
…ああもう、神様、こいつの腕もいじゃってもいいですか?
「俺はな!もっとこう、愛という名の進展を期待してたっつーのに!期待外れもいいとこだ!」
「はあぁ?んな事期待してたのかよ!大きなお世話だっつーの!!」
それで終わりかなんて言うから、何なのかと思ったがそんな事か。
こいつの頭の中はどうなっているのだろうか。思考が読めなすぎて、扱い難いったらありゃしない。
…と思えば、簡単に思考が読めちゃったりする時もあるもんだから、こっちはこいつに振り回されっぱなしだ。
だからもう、こいつに関しては小百合に任せるのが一番なんだろう。
あぁ成る程。こいつを上手く扱える奴が小百合しかいないのか。
一種の猛獣使いだな、小百合は。
「あーあ。折角あん時2人っきりにしてやったってのによぉ。進展無しじゃ話になんねーよ」
「…だから大きなお世話だって…」
そう、あの時。
小百合が、晃司がめんどくさい事になってるみたいと席を外したあの時。
どうやらあの時、この2人はろくでもない事を考えていたようで、別に晃司はめんどくさい事にも何もなっていなかったのだが、とりあえずそういう事にして、俺達をいい雰囲気にさせようと画策したのだという。
まるで、見合いの席でいやに頑張る双方の母親のようだ。本人達は自分達のペースで進んで行こうと考えているにも関わらず、ちょこちょこ色んな事に口を出しては空回ったりやりすぎたりする。でも、それでもめげないから質が悪い。
「…晃司、お前は俺の母ちゃんか」
「こんな意気地のない子を生んだ覚えはない!」
「生まれた覚えもねーし。そもそも生めねーじゃん」
つーか子供同い年って。そこも否定して欲しかった。
あれ?それも俺の方が早く生まれて…て、もうこの話はどうでもいいか。
「…てことはだ、賢悟」
My妄想世界へと誘われかけていた俺を、晃司の声が引き戻す。
「てことは?」
「お前達の今の関係って、何?」


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