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『秋の風とジグソーパズル』
【青春 恋愛小説】

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『秋の風とジグソーパズル』-2

「うぅ…ん。頭いてぇ。」二日酔いだ。飲みすぎたかな。あいつらが出て行ったのが2時ごろだったからな。
起き上がって部屋を見渡した。
「…さいあく。」
テーブルや床の上に散乱した空き缶。ぐちゃぐちゃに波打ったカーペット。その他、散らばった数々のゴミ。
とりあえず、ゴミの始末からだな。俺はますます痛みを増した頭を抱えて立ち上がった。
まず空き缶はこのゴミ袋で。
燃えるゴミはこのゴミ袋で。と。
手際よくゴミを袋に放り込む。
この床で寝てる奴は…どのゴミ袋だっけ?…って違う。
「柊、子…?」
溜め息をついた。
「今回はこいつか。」
うちが二次会の会場になると、結構な確率で誰かが酔いつぶれて置いてけぼりになる。周りの奴らもかなり酔っているから気付かれないのだ。
柊子の間の抜けたような寝顔は愛らしかった。しばらく眺めていようかとも思ったが、結局起こすことにした。無防備な寝顔を無断で見ているのは少し後ろめたい。
「柊子。起きろ。」
大きな声で呼びかけたが起きる気配は無い。
「起きろって。」
身体に触るのは少し躊躇われたが、肩を掴んで小さく揺さぶった。
「ん〜…。」
目を覚ましたみたいだ。
「……〜あれ、つばき?どうしたの?ここどこだっけ?…った、頭いたい。」
やれやれだ。

ヤカンがいつもの鳴き声をあげている。
俺は火を止め、いつもより少し重いヤカンを持ち上げ、そこから湯を注ぐ。
一つは自分用の大きめのマグカップ、もう一つは客用のコーヒーカップ。
出来上がったコーヒーを持ってテーブルへ向かう。
「ほれ、コーヒー。」
「ありがと、悪いね、気を使わせて。」
「いいって、気を使うなんて、気を使われるよりはいくらか楽だよ。」
揶揄するように言った。柊子が部屋で酔いつぶれていた後ろめたさからか、いつになく、謙虚な態度だったからだ。逆に居心地が悪い。
その台詞から俺の言いたいことが理解できたらしく、柊子は恥ずかしそうに苦笑して、コーヒーを一口すすった。
「苦っ、ブラックじゃん。砂糖とかないの?」
「無い。」
「えっ、だって料理とかにも使うでしょ?」
「あんまり手の込んだ料理しないからな。」
「これだから男は。」
柊子は呆れたように首を振って、諦めたようにもう一口コーヒーを飲んで顔をしかめた。
…あぁ、どうしていちいち全ての動作が俺を魅了するのだろう。
そのたびに俺の中を甘いものと、そして苦みが通り過ぎていく。
最近は苦みばかりが際立ってきた、いずれ甘みは消え、苦みだけが残ってしまう気がする。砂糖の入っていないブラックコーヒーのように。
ひさぎのせいだ。いや、あいつは何も悪くない。でも…
「ねぇ。これなに?」
柊子の声で我に帰った。
柊子の手には中くらいの、紙でできた箱がとられている。
「あぁ、それか。確かジグソーパズルだったかな。」結構前に誰かからもらったものだが、この間の掃除の際に部屋の隅から発掘されたものだ。200ピースくらいの小さなパズルだ。
「気に入ったならあげようか?」
「えっ、いいの?ありがとう。あ、今ここでやってもいい?」
いいもなにも、今組み立てるということは、柊子がしばらくこの部屋にいるってことで、俺にとって断る理由なんてあるはずも無かった。


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