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『秋の風とジグソーパズル』
【青春 恋愛小説】

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『秋の風とジグソーパズル』-3

柊子のパズルセンスは一言で言えば、壊滅的だった。袋を破いてピースをばら撒いてはみたものの、いっこうに進まない。そのほうが個人的にはむしろ好都合なのだが、あまりにじれったくて結局俺は手伝うことにした。
「ほら、こうやって周りから作っていくんだよ。」
「あー、すごい。」
手際よく組み立てていく俺にしきりに感心する。
あまり早く出来上がっても困るので、ゆっくりと組み立てる。
途中、ときどき柊子と手が触れるたび胸の奥が小さく跳ねた。
「あれ、このピースここじゃないのかな?」
「ん?どれ。…あぁこのピースはそこじゃないよ。それっぽいけど、ちょっと違うだろ。」
「そっか、あってると思ったんだけどな。」
そのピースを手放し、そこで、ふと柊子は手を止めた。それに合わせて突然表情まで暗くなった。まるで太陽が流れてきた雲にその光を突然遮られたみたいに。「どうした?」
不審に思い俺は声をかけた。
「うまく、いかないもんだなぁ。自分では絶対合ってるって思ってても、それが間違いだっていうことがあるんだよね…。」
寂しそうに苦笑してそう言った。
たかがパズルのことでそこまで深刻になるものなのか、と、俺以外なら不思議に思っただろう。でも俺はそうは思わなかった。きっと柊子は、ひさぎのことを思い出して今の台詞を言ったんだ。不思議なほどすんなりと、そのことが理解できた。
その証拠に、柊子は静かに話し始めた。俺としては、あまり聞きたくはない種類の話だったが。
「…ねぇ、私実は最近シツレンしたんだ。一月くらい前かな、私ひさぎに告白したの。」
そのことは知っている。というのは言わない。俺は黙って聞いた。
「私、多分…ううん、きっと、ひさぎだって私のことを好きでいてくれてるって思ってた。ひさぎの隣が私の場所で、私の隣がひさぎの場所。そうなるはずだって思ってた。でも、間違いだったみたい。」
「…ひさぎは、なんて言ったんだ。」
「ごめん、て一言。まさか振られるとは思ってなかったから、私全然何も言えなくなって。でも、その後ひさぎがね、友達でいたいって言ったの。今までどおりに。」
柊子はもうぬるくなったコーヒーが半分くらい残っているカップを両手で包むようにして、その黒い水面の奥に沈めていくように言葉を吐き出してていった。
「それでお前は、今までどおりのトモダチでいることにしたのか。」
柊子は小さく頷いた
「ん、一応ね。でも、あきらめられないから友達のフリをしながらひさぎのことは好きでいる、ってひさぎには言ったんだ。でも、それは強がって言った建前でね。本当は私そんなに根気強くないし。もうあきらめちゃってる。ただ私はどんな形でもいいからひさぎのそばに居たいって思っただけ。振られたからって、すぐにひさぎのそばを離れる覚悟ができてなかっただけなんだ。合わないピースだって分かってても、手を離すことができないの。」
俺は何も言えずにただ聞いていた。慰めの言葉一つさえ浮かばない。
何故にこうも居心地が悪く感じるのだろう。それはあるいは、俺が柊子のことを好きな気持ちが強すぎるからなのかもしれない。
「でも、そばにいるのだって、つらいだろ。」
そうだ。こいつら二人が、今までどおりに一緒にいるなんて、いくらなんでも距離が近すぎる、それくらい二人は親しかった。俺がいつも嫉妬していなくてはならないほどに。
柊子はその問いに答える代わりのように、静かにぬるいコーヒーをすすった。
「苦…。」
今度はあまり顔をしかめなかった。


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