織露府(オルロフ)家の花嫁-3
自分の家族や親戚のテーブルの前に立つのもまた、違った辛さがあった。
「これまで育てていただいて、ありがとうございます…」
嗚咽をこらえて、やっとの思いでそう言ったものの、千夏は耳まで真っ赤になり、もじもじして下を向くばかりだった。テーブルを去る間際にちらりと視線を投げてみると、父も全裸の娘を正視するのに忍びず、目を上げられないでいた。
大広間の一番奥に、織露府家の人々が集まっていた。
「ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします…」
千夏が震える声であいさつをすると、10人程の織露府家の男達がその周りを取り囲んだ。
「おお、綺麗な身体をしてるじゃないか。」
真っ黒な絨毛に覆われた股間を眺めながら、淳哉の父、旋太郎が言う。
「淳哉は美人の嫁さんをもらって、うらやましいなぁ。」
そう言いながら乳房に粘り着くような視線を絡ませるのは、旋太郎の弟の亮次郎だ。
「織露府家の嫁にふさわしいわい。」
千夏の全身を舐め回すようにして、しゃがれた声でそう言ったのは、織露府家の長老で、亡命貴族の二世にあたるイヴァン翁だ。
「肌の色が白くて、すべすべしているぞ。」
「さすが20歳だと、乳房の張りが違うな。」
「ヒップがキュッと上がっていて、いい感じじゃないか。」
「陰毛は少し濃い方だな。」
織露府家の男達は、グラスを片手に花嫁の全裸を遠慮なく眺め、その身体についてあれこれと品評を始めた。その間、千夏は恥辱に身を震わせながら、耐えるしかなかった。
やがて、千夏は淳哉に抱きかかえられ、大広間の中央に置いてあるベッドの上に下ろされた。マホガニーでできた豪華なダブルベッドにはまっ白いシーツがかけてあったが、毛布も掛け布団もなく、彼女は全裸のまま身体を丸くして、シーツの上に横たわった。
そこに、黒縁眼鏡をかけて白衣を着た50歳ぐらいの太った中年男が近寄って来る。
「織露府家の侍医の田所です。」
男は千夏に向かってそう自己紹介すると、続いて広間に集まった列席者に対して、深く頭を下げた。
「それでは、花嫁の純潔を確かめるため、これより処女検査を実施いたします。」
ヨーロッパの歴史を見ていると、王侯貴族の結婚成立が問題になった時などに、しばしば処女検査が行われている。日本に来る前のロシア貴族、オルロフ家では後の紛争をさけるため、結婚式で処女検査を行っていた。この風習が現在の織露府家でも残っており、花嫁は処女でなければならないと定められ、それを証明するため、結婚式の列席者の見守る中で処女検査を受けることになっているのだ。
織露府家の男達はベッドで横たわる千夏の周りに集まった。淳哉の母の真貴子に伴われて、仲人をした大学教授夫妻と千夏の両親もその横に並ぶ。花嫁を送る父と母、嫁をもらう織露府家、仲介をした仲人が揃って、花嫁が処女であることを確認し合うのだ。
田所はベッドに横たわる千夏の膝を折り曲げると、まるで当然のことのように声をかける。
「さあ、両脚を開いて、見せてください。」
そう言われても、千夏は折り曲げた膝をぴったりと閉じたままで、脚を開くことができない。処女検査を受けることも聞いており、だからこそ、淳哉とどれだけいいムードになっても一線を越えずに今日の日を迎えたのだが、やはり大勢が見ている前で自ら脚を開いて、陰部を露わにするなど、とてもできそうになかった。
(そんなこと言ったって、恥ずかしいのよぉ…)
千夏は心の中でそうつぶやく。
「さあ、がんばって、勇気を出して。」
何度言われても、ベッドの上でもじもじしている千夏を見て、淳哉が耳元で囁いた。愛する男性に急き立てられた千夏は、恨めしそうな顔で淳哉を見ると、ゆっくりと脚を開き始めた。
千夏の膝頭が弧を描いて開き、徐々に股間を露わにしていく。
大陰唇の膨らみには、艶々した恥毛が小判型に茂っている。ピタリと入り口を閉じた秘部は、初々しく少女の物のようだった。