恋人に捧げる舞子の物語(驟雨編)(その1)-3
あなたが琥珀色のグラスに唇をつけたとき、ふとあなたの横に座った男は、ほんとうに偶然だっ
たのだろうか…。痩せたその男は、白髪の混じった長い髪を背中で束ね、能面のような白いつる
りとした細長の顔をしていた。ビールグラスを持つ病的に白く細い指、幼虫の腹のような粘膜質
の唇…男の体全体から漂う肉欲に溢れた体臭に、あなたの淫襞が少しずつ鱗だつのをあなたは感
じていた。
「舞子さん…今夜は少し飲み過ぎですよ…」
カウンターの中のいつもの髭のマスターが、グラスを磨きながらあなたに言う。
あなたはふと気がつく…男が足元に置いた紙袋の中のものを…。
それは、無造作に絡んだ革鞭と黒ずんだ縄、そして褪せたガラス製の太い浣腸器だった…。
あのとき、あなたは自分の中に不意に訪れた微かな疼きに確かに気づいていた。
あなたのハイヒールの爪先から下半身、そして白いブラウスの胸元を、横目で舐めるように這う
男の視線の中に、あなたは自分自身が求め続けていたものを体に感じたのだった。
求めていたのは、あなただった…。
冷気が漂う薄暗い廃屋のような部屋の中…
あなたは頭の上部で手首を縄で括られ、その体を天井から垂れ下がる不気味な鎖で吊られていた。
すらりとした魅惑的な脚の爪先がわずかに床に触れ、あなたの艶やかな下着に包まれたしなやか
な体が、痛々しく伸びきっていた。
大きく胸の開いた白いスリップ姿の艶めかしい姿態は、肉惑的というわけではないが、熟れた女
の情感を十分過ぎるほど湛え、朽ち果てる前の果実のような匂いに包まれていた。
「…おれを誘ったんだろ…」
あなたの耳元で、男が低く濁った声で囁く…。
あなたの蕩けるような肌…そして、ほどよい膨らみをもつ胸と滑らかな曲線を描く腹部、括れた
腰…そして乱れたスリップの裾から伸びたむっちりとした乳白色の内腿…
あなたという餌を与えられた男は、飢えた獣のようにゆっくりとあなたの吊られた体を抱くよう
にその下着に頬を擦りつけ、鼻を疼かせながらその匂いを嗅ぐ。
「いい匂いじゃねえか…」
そう言いながら、男はや白いシルクの下着に覆われたあなたの肌のぬくもりを求めるように、
その頬をあなたの腹部に強く擦りつける。
柔らかな乳肉、滑らかに窪んだ脇腹、そして熟れた女の淫らな陰部を思わせる恥丘の盛り上がり
に、男はあなたの下着に残った仄かな沁みを探るように唾液で濡れた唇を強く押しつけていった。