投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

青かった日々
【青春 恋愛小説】

青かった日々の最初へ 青かった日々 4 青かった日々 6 青かった日々の最後へ

青かった日々-5

「考えたくねぇ……」


朝から堂々巡りの思考のせいで、もはや何も考えたくなくなっていた悟史は、せめて一限までは頭を休めようと目を閉じる。

途中、隣の席の椅子が動く音が聞こえたが、心地よい重量感を備え始めた瞼を開ける気にもなれず、睡眠を続行することに決めた。

担任の声を聞いた瞬間、悟史の意識は「楕眠」という闇に落ちていった。

悟史が意識を地平線の遥か彼方に飛ばしている間に、担任によるHRは着々と進んでいる。

出席を取っている途中、教室の扉が乱暴に開かれ、二人の生徒が姿を見せた。

片や、一般的な男子生徒よりもやや小柄な、中性的な顔を備えた少年。

片や、その少年よりも頭一つ分高い身長と、一回り大きなガタイを持った短髪の少年である。


「あ?、工藤(くどう)、鈴木。お前等か。今朝無茶な運転をしてたのは」


担任の質問に、鈴木と呼ばれた小柄な少年は素直に謝り、悟史の前の席に座る。

一方の工藤と呼ばれた生徒は「わりぃ」と一言担任に告げると、何事も無かったように悟史の一つ後ろである自分の席に腰を下ろした。

担任は短く嘆息すると、出席確認を続ける。新学期が始まってまだ三日目でありながら、日常となりはじめている風景だった。

担任は別段二人に注意をすることもなく、今日は特になんの行事もないことを告げると、チャイムと同時に教室を出る。

直後、一限までの僅かな時間の間、教室は朝の喧騒に包まれた。

夏美は、先ほどギリギリに現れた二人に話しかける。


「直人(なおと)、またやったわね」


工藤 直人(くどう なおと)、大柄な少年のフルネームを呼び、夏美は呆れの眼差しを彼に向ける。

直人は特に気に留めたような顔もせず、


「大(だい)がわりぃんだよ。あいつ遅っせえんだもん」


とだけ呟く。実際、自転車のペダルを漕いでいたのはこの男なのだが、まるで自分の運転については非は一つも無いと言いたげである。


「あはは、ごめんね」


直人に悪いと言われた少年、鈴木 大(すずき だい)は変声期を過ぎてもさほど低くならなかった声で謝る。

新学期が始まってから打率十割を誇る超ギリギリ登校。そして毎回生徒指導に捕まり、結局HRに間に合わない二人組。

更には入学当初から無断遅刻、無断早退、サボタージュの常習犯でもある悟史も加わり、夏美も含め、この四人は昔から問題児グループとして見られている。

それは四人が一緒になった小学校からであり、夏美は自分もそのグループに入れられていることに激しく異を唱えたこともあった。

が、


「あの三人をまとめるのは夏美の役目」


というのが周りからの評価であり、もはやどうあっても覆せないことを悟ってからは、諦めに近い感情を持っている。


青かった日々の最初へ 青かった日々 4 青かった日々 6 青かった日々の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前