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青かった日々
【青春 恋愛小説】

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青かった日々-6

「もういいわ」


はあ、と盛大に息を吐き、夏美は席へと戻る。本当は一発説教でもくれてやろうかとも考えていたが、爆睡している悟史と、その隣で本を読んでいる女子生徒を見て、気が削がれてしまった。

授業までの残り数分、席に着いた夏美はその女子生徒を見る。

自分とは正反対の背中まで綺麗に流れる黒髪。漫画を読んでいるのか、周りの目など全く気にした様子も無く、ころころと表情が変わっていく。

その様子は、同姓である夏美の目から見ても、贔屓(ひいき)目なしに可愛く見えた。


「遠藤(えんどう)さん、だっけ」


夏美の呟きは始鈴によってかき消され、誰にも聞かれることは無かった。





悟史の意識は、頬に当たる違和感によって引き戻された。

瞼を開けたいが、未だに重量感を持つそれを持ち上げることは難しく、気にならない程度の刺激でもあったので、睡眠の続行を決意して再び意識を遥か彼方まで飛ばし始める。

しかし、その刺激は間隔を短くしながら、的確に悟史があと一歩で眠りに落ちるというときにやってくる。

これは、最早悪意と呼ぶに相応(ふさわ)しい。

三度までは無視を決めこんだが、四度目になって原因を突き止めるべく、体に覚醒を促し、瞼を開いた。

視線の先に見えるのは、シャープペンシルの先端とそれを持っている指先。

そして、隣に座っている少女の顔だった。


「遠藤、何してんの」


悟史の問いに、遠藤は悪戯っぽい笑みを浮かべながらシャーペンの先を教室の前の方に向ける。

悟史が視線を追わせると、その先にあった時計の短針は十一時を越えようとしていた。


「ニ限、終わったよ」


遠藤の声に顔を上げる。なるほど、流石に二時間以上爆睡していては学校へ来ている意味も半減してしまう。

一言礼を述べて次の授業の教科書を机に並べた所で、遠藤が小さく笑っていることに気付いた。


「ん?」

「桜木君、まだ寝ぼけてる」


彼女は悟史が置いた教科書を取ると、目の前に掲げる。


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