エリザベス・悲劇の人形たちY-1
国立バーバラレス医療センター
フリーラムランドの首都スィンズの郊外に広大な敷地を有し…
様々な医療施設、介護・保養施設、研究施設が整えられている国の重要な医療機関である。
充実した最新の医療設備を持ち、優秀な医師や看護士たちが揃っている事で結構評判がイイ。
マルセル・ハーレスがバーバラに収容されて、はや3日…。
総合医療科で働く顔見知りからの知らせでシェリー・ハイバーは見舞いに訪れた。
グロリアスとは友人であるシェリーは、マルセルとは同じ年頃。
大学時代からの、親しい友人でもある。
マルセルは幼い頃から虚弱体質である事は知っていた。
あまり長生きはしないだろうと言う話しも聞いている。
今回、マルセルが倒れて同センターに収容されたとグロリアスから知らされた時には正直、不安な気持ちになっていた。
「もう、彼女もおしまいネェ」と、覚悟していたのだ。
しかし…
もう既に、マルセルは意識が回復している事を聞かされ、安堵の気持ちになった。
…早く、顔見たい!…
シェリーは逸る気持ちを押さえながら、マルセルと面会した。
既にマルセルは、集中治療室から一般病棟に移っていた。
広い個室部屋が与えられているから、ゆったりと静かにくつろげようになっている。
8年前にセンターが建設された際…
マルセルは資金援助して、多大な貢献をしていた実績が今でも高く評価されている。
だから今回は、病院側がマルセルを丁寧にもてなしてくれたのだ。
「シェリー」
友人との久しぶりの顔合わせにマルセルは思わず、顔がほころんだ。
シェリーだって大喜びである。
互いに顔を合わせるのも、約1年ぶりだろう。
シェリーはデザイナーの仕事と家事、人形のルーシーたちの世話で忙しい日々が続いている。
マルセルと違ってシェリーは今も独身。
何もかも、1人でこなすから大変である。
離婚したマルセルだって1人なのだが、自分と違って頭はイイし、とても器用。
自分自身は不器用だって、いつも不満に思ってしまう。
そのマルセルと、こうして顔を合わせられた。
何て、幸せな事か。