エリザベス・悲劇の人形たちY-4
「大体よぉ…、あのエリザベスにガキを与えちまった事自体、そもそもの間違いだったんだよ」
「間違いだった?」
「そう。言葉悪いが…
エリザベスにとっちゃあ、子供人形のオモチャを与えられたようなものだ。我が子を立派な人形にしようなんて考え、毛頭ねえんだからな。
子供たちは私だけの大切な宝物。
いつまでも、可愛い女の子であればイイ。
毎日、美味しい物をイッパイ食べて思いっきり遊んでればイイ。
…エリザベスの子供人形への思いはその程度なんだよ」
「エリザベスが怠け者だって事は聞いていたけど、こんなにヒドいとは」
「母親失格だ、あのグータラ人形は」
「でもああ見えても…」
―――――――――
「エリザベスが、女王様? ウソでしょう?」
シェリーの説明にマルセルは耳を疑った。
あのワガママで、高飛車なエリザベスが…
女王様!?
マルセルは聞き返す。
間違いないと、シェリーは答える。
「エリザベスの本当の名前はエリザベーラ。
幸せ人形王国の女王様なのよ」
「幸せ人形王国て言ったら、動く人形だけの種族が築き上げた小さな王国だったわね?
遠い西の彼方に巨大な夢の城を作って、自分たちだけの国を作って暮らしていた」
マルセルに合わせるようにして、シェリーは話しを続ける。
「争いもなく、仲良く楽しく暮らしていたけれど…」
人形王国の住人たちは皆、怠け者…
他の種族に援助されてばかりいて、何もしなかったから…
数十年前に、ブラスト族によって滅ぼされてしまった。
…大体、こう言った経緯だろう?
エリザベスは1人、フリーラムランドに逃亡して今日まで生き長らえていたのだ。
なるほど…
エリザベスが自らを偉く見せたがるのも、うなづける。
「エリザベーラは、物凄くワガママで自己中心的。傲慢で怠け者だったらしいわ」
………………………
グロリアスとブルーレッドの語り合いは続いていた。
「どうする?」と、ブルーレッドは決断を求め始める。
「ま、イイっか」
「よっしゃ、取引成立」
ブルーレッドは鑑定書を提示して、グロリアスに捺印を求めた。
持参した印鑑で書類に捺印しながら、グロリアスは質問した。