テノヒラ-1
男、千葉奏人。
ただいま携帯片手に一人、悶々としております。
このボタンを押すことにより俺の高校の青春が決まると言っても過言ではない。
宛先は言うまでもなく‥‥
想い人ですよ。
内容はシンプルに一言。
俺の全身全霊を込めて
ピッ
送信完了しました
アドレスは本人が知らないうちに登録させていただきました。
あぁ、いいさ。
勝手に人の携帯開きましたよ。
勝手に赤外線とかしちゃいましたよ。
ここまできたら手段なんて選んでられないんだ。
佳佑と優衣にあそこまで言われて何もできないなんてことじゃ、申し訳なくて顔も見れない。
あとは彼女次第。
会いたいの一言だけのメールには時間も場所も指定しなかった。
会いに来るとしたら、きっとあそこにだろうから。
あのとき、あの瞬間の俺らは確かに通じていたはず。
会って確かめたいんだ。
佳佑からの言葉でも優衣からの言葉でもなく
彼女の口から
彼女の声で
彼女の思いを
ついた公園には誰もいなくて、あのときみたいに静かだった。
彼女は来るだろうか‥‥
来ないなら、来ないでそれが答えなのかもしれない。
いや、ちょっと待て。
さっき俺、告白したよな?
めちゃくちゃ恥ずかしいくらい大好きです宣言したよな?
そして彼女は逃げた‥
つまりは‥
それが答えなのか‥?
それなのに会いたいとかメールしちゃってる俺って気持ち悪くないか!??
つーか何でアドレス知ってんのってなんじゃん!
勝手に登録とかしちゃってプライバシーとか個人情報なんとかで引っ掻かるんじゃない!??
あぁー落ち着け。
数行、いや数秒前まで手段なんて選んでられないとかかっこいいこと言ってたじゃん。
そうだよ、これは賭けなんだ。そうギャンブル。
ギャンブルのない人生なんてワサビの入ってない寿司じゃねぇかって漫画で言ってた。
ワサビの入ってない寿司なんて、そんな玉子男に成り下がる訳にはいかない。
大トロとまではいかなくともホタテくらいにはなりたいじゃないか。
ただ単にホタテが好きなだけだけど。
あれ?ホタテってわさび入ってたっけ?
もう、どっちでもいいや。