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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第二話「励ましてあげタイッ!?」-12

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 競技場の周囲を走り体を温める里美だが、心中は玉虫色に乱れていた。
 ――何怒ってんだろ、あたし。
 本当のところ、ビデオのことなどどうでも良かった。
 最近は気が滅入ることが多い。だから誰かに当り散らしたい。それが怒りの真の理由。
 紀夫はあくまでもマネージャーであり、都合の良い存在。男として意識する必要は無く、適度に愚痴を聞いてくれればよいとさえ思っていた。
 けれど最近の彼は理恵や久恵と妙な雰囲気を醸しており、それを意識すると今度は紅葉にからかわれる。
 ――ハズレを引いたのかしら?
 紀夫ごときにそんな甲斐性は無い。けれど欲求不満なのは彼のほうではなく、相手のほう。断れない彼ならあるいはその誘惑に耐えられず……?
 ――ばっかみたい。そんなの好きにやってればいいのよ。
 走るペースを上げる。アップにしては少しオーバーペースだが、今の彼女にはそれぐらいの速度が必要。余計な思考を振り切るのだから。

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 お昼になるとまた例の男子が用意してくれたお弁当が広げられる。連日用意してくれるのはご苦労なことだが、予算と謝礼は部費から出しているらしく、それほど気兼ねも無い。部員達はイタダキマスの掛け声と一緒に箸を伸ばしていた。
 女子の輪に入りづらい紀夫は今日もコンビニおにぎりを買っており、一人はなれた場所でスケジュール表を見ていた。残すところ女子八百メートル走のみ。
「はい、ノリチンのお弁当」
 ピンクの包みを差し出してきたのは理恵。
「え? ああ、ありがとう」
 戸惑いながらもそれを受け取る紀夫は、昨日の約束を思い出していた。
「うふふ。早起きして作ったんだよ?」
 理恵の健気な一面に軽い感動を覚えながら包みを開けると、それなりに豪勢なお弁当が顔をだした。
 たこさんウインナーに厚焼き玉子。野菜の海苔巻きに味付けごはんとなかなか見栄えも良い。
「これ、理恵さんがつくったの?」
「んふふ、見直した?」
「うん。驚いたよ」
 人には何かしら特技があるものだと関心しながら昼飯をとることにする紀夫。
 まずは定番の卵焼きから……と思いきや、横から出た手がそれを奪う。
「あ? あれ?」
「ん、もぐもぐ……うん。美味しい」
 隣を見るとほんのり汗をかいた里美が口をもごもごさせていた。
「サトミン酷い!」
「理恵、これ本当に一人で作ったの?」
「えっ?」
「なんだかよく食べたことのある味なんだけど? これって駅前のお弁当屋さんのじゃない?」
「あはは……、ばれちゃった……」
 舌を出す理恵は照れながらそれを認めるが、なんのことか分からない紀夫は首を傾げるばかり。
「あ、そうなんだ……」
「でもでも、たこさんはあたしが切ったよ」
「そんなのあたしだってできるわよ。ただ切れ込みいれるだけじゃない」
「なによー、準備するの大変だったんだからね!」
「まあまあ香山さんも理恵さんも……」
「島本が鼻の下伸ばしてるからいけないんでしょ?」
「理恵、がんばって選んだのになあ」
 険悪になりだす二人を宥めようとするが、かえって逆効果らしく、何故か矛先が自分に向いてしまう。
「でも理恵さんが用意してくれたのは本当だから嬉しかったよ。ありがとう」
「そう? そうだよね。うふふ。恩に着なさいよ?」
「んもう、すぐでれでれしてさ。ヤラシイの……」
「香山さん。さっきから酷いよ? 理恵さんはせっかく……」
「アーうるさいうるさい! あんたなんか知るか! そんなに理恵がいいなら理恵と結婚すれば? そのときは駅前の仕出し弁当をご祝儀に出したげる!」
「サトミン?」
 怒り心頭な里美は小学生の口げんかで押し切られたようになり、自分のリュックからバナナとスポーツドリンクを取り出すと侘しい食事を始める。
「そっとしておいてあげたら? 里美ちゃん、試合前で気が立ってるのよ……」
 事を荒立てる紅葉が先輩風を吹かせようとすると、どこか薄ら寒く、騙されまいとばかりに半眼を送ってしまう。
「……ねえマネージャー君、なんで里美ちゃんが不機嫌なのか知りたい?」
「はあ……まあそうですね」
 試合を直前にナーバスになっている。そこまでは彼も分かる。けれど、紅葉が言うのは別にあるらしく、また刺々しい里美と接するのはそれなりに気苦労が募る。
「里美ちゃん。マネージャー君借りるね?」
「勝手にしてください!」
 この余計な一言がなければ「やっぱり先輩」という風格も保てたというのに……。


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