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……タイッ!?
【学園物 官能小説】

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……タイッ!? 第二話「励ましてあげタイッ!?」-11

「里美ちゃんはマネージャー君のこと、なんとも思ってないの?」
「いいえ? 思ってますよ」
「まあ、どんな風に?」
「彼は優秀なマネージャーです。なので非常に助かっています」
 そっちがその気ならとばかりに定型句を返す。
「んまあ……言うわね……」
 食いついたとばかりに期待していた紅葉はつまらなそうに肩を竦めるも、すぐにまた妙案を思いついたらしく、上目遣いで視線を送ってくる。
「ねえ、私がマネージャー君と遊んだりしても怒らない?」
「怒るもなにも、彼はみんなのマネージャーです。先輩だけと遊ぶのはおかしいんじゃないですか?」
「んー、そうじゃなくて、プライベートでってこと。この前の久恵みたいにさ……」
「……!?」
 久恵との急接近は今も不可思議な出来事だったと記憶しており、珍獣を発見したような気持ちがあった。それこそ頭にゴミがついていたからという言い訳の方が信憑性もあるというもの。
「いいんじゃないんですか? でも島本君に先輩じゃ役不足なんじゃないですか?」
「言うわね。まあいいわ……」
 からかい甲斐が無いとばかりに席を立つ紅葉は理恵の隣に向かい、そして同じことを繰り返していた。もっとも理恵のハシャギっぷりを見ると、今度は上手くいったのであろう。
 一つ心残りなのは紀夫に対して紅葉がどう役不足なのか、その答えが上手く出ないこと。
 ――役不足ってどういう意味だっけ?
 家に帰っても辞書は引くまい。里美はそう決意した。

**――**

 晴天とは言いがたい空模様、西の空には薄暗い雲が渦巻いていた。
「やだなー、走ってる最中に雨降ったら最悪なんだけど……」
 里美は空を仰ぎ見ながら呟く。
 本来のプログラムでは彼女の参加する女子千メートル走は午前の予定だった。しかし、前日の雨のせいで繰越になった競技がいくつかあり、午後からの開始となった。
「大丈夫だよ。予報だと夜からって言ってたし」
 クーラーボックス片手にビデオを構える紀夫。その先では理恵がポージングをしており、さすがに彼も苦笑い。
「予報なんてアテにならないわ。っていうか、もし今日駄目だったらどうなっちゃうんだろ?」
 風が強くなると嫌な予感が増してしまう。
「確か来週の日曜が予備日だから大丈夫よ」
 久恵がプログラムの隅を指しながら言う。けれどそれはそれで緊張状態を引き伸ばすことにもなる。実のところ線の細い里美はそれが不安だった。
「あらあら里美ちゃん、緊張してるの?」
「きゃぁ!」
 背後から急に顔を出す紅葉に驚きをあらわにする里美は、眉をしかめていたずらっ子の先輩を睨みつける。
「もう、脅かさないで下さいよ」
「ごめーん。緊張をほぐしてあげようと思ってさ……」
「緊張なんてしてません! 結構です!」
「そんなこといっちゃって?」
 嫌がるほどに絡みつく紅葉の様子は獲物を捉えた猫そのもの。他の部員達はターゲットにされることを嫌がり、遠巻きに眺めているだけであった。
「香山さん、ビデオなんだけどさ……」
「ん? ああうん。お願いね」
「いや、それがその、なんかビデオの調子が悪くて、もしかしたら撮れないかも……」
 ビデオのモニターには赤い線がいくつも走っており、音もガギガギ言っている。
 少ない部費を集めて買った二世代前のカメラは今年で三年目を迎えており、既に寿命が訪れている。騙し騙し使っていたとはいえ、もった方だと歴史を知る二年生は頷いていた。
「え? ちょっとそれは無いんじゃない? せっかくの晴れ舞台っていうか、フォームとかもチェックしたいのに……」
 けれど出番を控えていた里美にしてみれば納得がいかない。たかが動画で保存されるだけとはいえ、擬似的にドキュメンタリーの主役になれる機会を逃すのが嫌だった。
「もう、使えないマネージャーね。ちゃんと管理なさいよ!」
「もう寿命なのよ。仕方ないけどね」
 紅葉が真っ赤になる自分の映像を見ながら「これはスプラッターね」と楽しそうに言う。
「だって、あたしの……」
「いいじゃない。皆でシャメ撮っておいてあげるからさ」
「そんなの……」
 部員の携帯電話で交互に撮ればそれも可能かもしれないが、陸上部のアーカイブに切れ切れで残る動画などあまり嬉しいものでもない。
「ゴメン」
「あんたのせいじゃないんなら謝らないでよ。ムカツクわ!」
 それだけ言うと、里美は一人アップを始めた。


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