エリザベス・悲劇の人形たちW-3
「アンタって、今まであちこちの家庭に飼われていたみたいだけど…
何もしなくて、ただ遊んで暮らしていただけじゃないの?
しかも今みたいに、贅沢三昧やっていた。
そうよね?」
「ソンナ事、オ前ニハ関係ナイ!」と、エリザベスは一喝した。
グロリアスは話しを続けた。
「アンタの極端な贅沢思考と、自己中心的で傲慢且つワガママのせいで、殆どの人たちから嫌われてしまっている」
「ソンナ事ハナイ。
私ハ、気品溢レル高級人形トシテ、大変尊敬サレテイル」
「尊敬されている高級人形が、どうして…あちこちの家庭で厄介者扱いされていたのかなぁ?
飼い主はみーんな、口揃えて言ってたわよ。
…エリザベスは美しい人形だけど、やたら金がかかる。…ってね」
目を見開いたままのエリザベスは、体を震わせていた。
プライドを傷付けられたからだろう。
許せない!
「オ黙リナサイ!」
「それにエリザベス、他の人形の子供たちを平気で殺した事もあった。
…そうよね?」
「ソンナ事ハ、私ハ知ラナイ」
カッとなったグロリアスは檻戸を力込めて強く足蹴りした。
エリザベスは驚いて、泣きそうな顔をする。
「惚けるんじゃないわよッ!! アンタの事は全部、調べてるんだよッ!!
それぞれの家庭での生活態度、人形としての振る舞いとか色々とね!!」
グロリアスの一喝するような強い口調に、エリザベスは震え出す。
「ヤッテナイワァー」
そしてとうとう、メソメソ泣き出した。
「やってないなんて言わせない」
「ヤッテナイ! ヤッテナイ! ヤッテナイ!」
エリザベス、さっきまでの威勢はどこへやら。
子供みたいに足をバタバタさせ、ワァーワァー泣くばかりである。
自らを偉く見せたがる割には、意外と臆病な人形…それがエリザベスなのだ。
グロリアスは怒りを込めた表情でエリザベスを睨み付けた。
「姉が倒れたのも、アンタのせいだって事は分かってるのよ」
「ア、アレハ…」
「これも知らないなんて、言わせない。
姉に対して取ったアンタの冷たい行動に比べたら、子供人形の1人や2人の犠牲になんて軽いもだわ」
こう断言するグロリアスは自らの腹の内を見せた。
エリザベスに対する激しい怒りで、腸が煮えくり返るグロリアス。
マルセルが倒れたのは、エリザベスが原因だって事は分かっている。
まだ意識は回復していないマルセルから直接、話しを聞き出す事は出来ないけれど…
知り合いの聖導士が得意とする霊査で、相手の魂から間接的に聞き出せる事は可能だった。