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初雪と朧月
【初恋 恋愛小説】

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主役不在-2

そして今日…。
場所は行き慣れた家電量販店…ビック〇メ〇。
どういう訳か目の前には、中島 奈津美(なかじま なつみ)がいた。
中学生の時に同じクラスになり、普通に話しをして遊びを共にした友達の内の1人だ。
俺…淀川 竹志(たけし)にとって特筆する事があるとすれば、親友がベタ惚れである事以外には無い。
「久しぶり。卒業式以来?」
「おう、中島じゃないか。久しぶり」
俺じゃなくてアイツに会ってやれよ。とは流石に言えず無難な挨拶になる。
「今日はどうしたんだ?電気屋なんて珍しいじゃないか?」
「ケータイ買いに来たんだ。そう言えば、今日は1人なの?」
キョロキョロっと軽く周りを見回して聞いてくる。
「あぁ。1人だけど?どうしてだ?」
別に変な問ではないだろう。しかし、何か違和感を感じた。
「あ…えっと、"誰か"と一緒のイメージがあったからさ」
珍しく歯切れの悪い気がした。
「あぁ…」
気の抜けた返事を返してみたも、裏では少ない脳みそをフル回転させる。
正直、俺に友人はあまり多くない。もし、誰かと一緒に居るイメージがあるとすれば、その"誰か"は不特定多数などではなく"誰かさん"に自然と絞られてしまうわけだ。
「そう言えば…」
…ひょっとしてコイツ等はお互いに意識しあっていたのではないか?そう勘ぐらずにはいられなかった。
「中学の時には携帯持ってなかったよな?番号とメアド交換しようぜ。そっちのはメアドを決めてからでいいから」
そう言って買ったばかりの携帯の赤外線受光部を向けさせる。
「ついでに、コイツのも教えとくぜ」
断る暇もなく"誰かさん"のアドレス帳データも送りつける。
「良いの?そんな勝手に教えちゃって?」
既に送り込まれたアドレスにちょっと驚いたように、問い返される。
本当は勝手に個人情報を渡すのは良くない。
(当人は本当はお前さんと一番話したいと思ってるだろうよ)とは言えず、
「大丈夫大丈夫〜」
そう笑って誤魔化す。
「奈っちゃん。どうしたの〜?」
少し遠くから高い…そして少しダレた気配のする知らない声が届いた。
「あ!?友達が待ちくたびれちゃたみたい。ごめん。またね」
そう言って、友達の方へ行ってしまった。
「おう。またな」
(俺にできる事はやったよな?)
友達とやらに合流する後ろ姿を確認する。
「待たせて、ごめん」
「何?ナンパ〜?」
合流した女子は声と同じように、知らない顔だった。
そう言えば、中島のどこが良いのだろうか?かわいい顔をしていないと言えば嘘になるが、それを言ってしまえば…たった今、中島が合流した見知らぬ女子の方が上ではないか?そういう思いが頭をよぎる。
とりあえず、"誰かさん"とそのコトについて趣味が合わなかったのは良い事だった。
とにかく今は、小さな恋愛話の主役の友人を応援してやろうと思えるのだから。
そう思った直後に、鏡に自分の姿が映っている事に気が付いた。
(俺にもビビっとくる人は現れるのかね〜?)
そういう人がいつ現れるのか、それとも、現れているのに気が付いていないのか?
(まぁ、探し回る程、飢えちゃいない)
どちらにしても、彼が主役の恋愛話がいつになるかは誰にもわからない。


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