鎮魂(その3)-3
男たちの嘲笑の中で、針に刺された膣襞から淫汁が滲み出し、どろどろと粘った血汁と共に秘裂
から内股に幾本もの筋を作りながら肌を這うように流れ落ちる…。
その瞬間、私はその長い夢から覚めた…。
ホテルの窓からは、どこまでも澄みきった空と蒼い海の境に、仄かに朝の光が滲みだしているの
が見える。
黎明に包まれた地中海のゆったりとした波が、無言のまま空白のときを刻んでいる。そしてあの
人の顔が、その波の闇に包まれた深い海底から、徐々に浮かび上がってくるようだった。
あの人と再び会ったのは、私があの人に犯されたあのときから十五年後だった…。あれから私は
あの人のすべてと私の罪を忘れようと自分自身の中でもがき続けていた。
このホテルのラウンジで見かけたあの人は、すでに瑞々しい白髪に覆われていた。
凛々しく優雅で気品にあふれたあの人の顔が、のっぺりとした能面のような仮面に見えてくる。
その仮面が、私の中に咽喉を駆け上がる胸の息苦しさを再び甦らせ、同時に私の陰部を疼かせ始
めていた。
私を嗜虐し犯したあの人を、なぜ私はずっと愛し続けていたのだろうか…
私はあの人と何度か言葉をかわすうちに、あの深海の暗闇を湛えたような瞳に魅了されるように
ホテルのラウンジバーに誘われた。
あの人は、私が十五年前のあの女子高生であることに、まったく気がついていなかった。そして
葡萄色のワイングラスを傾けながら、あの人がテーブルに置いたのは、あのとき私の陰部をなぞ
った登山ナイフだった。
「すてきなナイフだわ…」
私はその柄の部分を指で撫でる。ナイフの先には、あのときの私の淫汁が確かに絡んだのだ…。
「三十数年前に、ある女性からプレゼントされたものだよ…そして僕の快楽の象徴だ…」
あの人はそのナイフを手に取り、尖った光沢のある刃を幽かな淡い光の中にかざす。
あのとき私の陰部をなぞったあのナイフ…。そして妖しい光を放つナイフの鋭い先端に私は指を
あてた。
「一体、どんな快楽かしら…」と言いながら、私はナイフを持つあの人の湿った指に触れた。
「君の想像におまかせするよ…」
私はあの人の肩に頬を触れながら、その蠱惑的な茶色の瞳の中を覗き込む。