プラトニックラブ2-4
「先輩聞いてますか?」
お酒で顔がほんのり赤く色づいた亜季が私を真っ直ぐ見つめる。
「ふふ、聞いてる」
「笑うとこじゃないですよ〜」
時々、怖くなる。
亜季といると楽しいと思っている自分に。
亜季の笑顔を見て少し胸がしめつけられる。
亜季を失いたくない
そんな思いが私の頭を支配した。
タクシーを降りたとき、自分が随分酔っていることに気付いた。
少しふらついた足でエレベーターに乗り込み、カバンに入っている鍵を探した。
エレベーターを降りた途端、自分の部屋の前に誰かが座っているのが見えた。
それが誰なのかはすぐにわかった。
「やっと来た」
聞き覚えのある声。
ピアスだらけの赤毛の男の子。
Tシャツ姿で、今朝よりも随分幼く見える。
「おかえり」
そう言いながら少年は手に持っていたものを空き缶の中に入れた。
タバコの匂いが鼻をかすめる。
「待ってたの?」
「まぁね」
少年は足元に置いてあった紙袋を持ち、するりと私の後ろにまわりこみ背中をぐいぐいと押した。
「な、なに…?!」
いきなり押されて思わずつまずきそうになる私を少年は片手で支え、素早く私の手から鍵を抜き取った。
鼻歌を歌いながら少年は私の部屋の鍵をあけている。
「ちょっ…なにする…」
バタン――
一瞬の出来事だった。
少年の冷たい手が私の口を覆い、酔いと緊張で熱く高揚している顔には丁度よい冷たさだった。
私を後ろから抱き抱えるような形で、耳元で囁かれる。
「あんまり大きい声出すと、近所迷惑だよ」
耳が一気にカァっと熱くなるのがわかった。
後ろにいる少年を思いきり突き飛ばし、玄関の電気をつけた。
「いってぇ……カドにあたった…」
少年は床にもたれ掛かり腰を押さえている。